インタビュー | 2024.9.3 Tue
『東葛からワールドカップへ出場する選手を輩出したい』
そう語るのは、千葉県社会人2部リーグに所属する FC GRASION東葛 のGM 二瓶 颯太さん。
クラブハウスとホームグラウンドが完成し、これから一歩ずつカテゴリーを上げていくサッカークラブです。
今回のインタビューでは、FC GRASION東葛が描くビジョンと、地域に根付くチームのあり方について伺いました。
二瓶 颯太 (にへい そうた)
生年月日:1995年8月26日
出身地:千葉県我孫子市
FC GRASION東葛 GM
経歴:
小学1年生からサッカーを始め、少年団(小学校)、クラブチーム(中学校)、部活(高校)、サークル(大学)でサッカーを続ける。大学卒業後は銀行に勤め、営業担当として活躍。2024年1月よりFC GRASION東葛のGMに就任。営業・広報・企画運営などクラブ運営に関する業務全般を行う。
『東葛からワールドカップへ』をスローガンに
―2024年7月より、RDX JAPANとFC GRASION東葛(以下、グラシオン)はパートナーシップを締結いたしました。その経緯から、今回インタビューをさせていただきます。まず、グラシオンがどのようなチームなのか、お教えいただけますか。
二瓶)グラシオンは千葉県柏市に店舗を構えてから40年を超える老舗サッカーショップ「エベスポーツ柏」が運営監修し一昨年に設立、去年から本格的に活動を始めました。チーム名にある「東葛」は、エベスポーツ柏が東葛地区のサッカー少年のユニフォームを製作させていただき、長くお世話になってきた恩返しという意味でホームタウンとさせていただきました。グラウンドを野田市に建設したことはもちろんのこと、主に東葛地区に所縁あるメンバーでクラブを立ち上げ、活動を始めたことも理由の一つです。
―2024年7月28日(日)、グラシオンのホームグラウンドにてグランドオープンイベントが開催され、私も参加させていただきました。とても素敵なグラウンドとクラブハウスでしたが、それらの環境がチームの成長や上位カテゴリーを目指す上で、どのような役割を果たすとお考えでしょうか。
二瓶)たくさんの方のご協力をいただき、クラブハウスや自前のグラウンドといった環境面を迅速に整備しました。理想とするサッカーのスタイルがあっても、グラウンドがなければ活動拠点が定まらず、選手の参加率や活動頻度が低下してしまいます。そうなると、試合で勝つのが難しくなります。私たちは結成して間もないチームですが、運営においてハード面を重視しています。選手の気持ちを尊重し、彼らがプレーしやすい環境を整えることが重要だと考えています。
―グラウンドやクラブハウスが整ったことで、選手側からどのような反応がありましたか。
二瓶)今シーズンから加入した選手たちは、人工芝のグラウンドやクラブの活動を実際に見て、魅力を感じ入団してくれた選手たちです。また、RDXさんにお世話になっているトレーニングジムも活用しており、怪我を負っている選手が多い中でも、筋力維持や体のケアをサポートできる体制が整っていることが、サッカーを長く続ける上で非常に重要です。こうした選手の体をケアできる施設があることも、我々の強みとなっています。
―クラブスローガンとして『東葛からワールドカップへ』を掲げています。東葛から世界で戦える選手を輩出していきたいというこのスローガンには、どのような思いが込められていますか。
二瓶)クラブがプロチームになることを目指しているのはもちろんですが、グラシオンというクラブに携わる一人ひとりが飛躍していってほしいという思いを込めています。怪我やタイミング、運が悪くプロになれなかった選手たちにも、サッカーに情熱を注ぎ、夢や目標を追いかけていく楽しさを持ち続けて欲しいという思いで取り組んでいます。まだ駆け出しのサッカークラブですが、大人になっても夢や目標を大きく掲げ、声に出し、必死に高みを目指す姿が、人を惹きつけ感動させるものではないかと考えています。来年からはジュニアユースチームを創設しますが、学生たちにも高い意識を持ってもらいたいという想いも込めて、このようなスローガンを掲げています。
―日本代表経験を持つ南 雄太さんやJ1優勝経験を持つ澤 昌克さんがコーチとして参加されていることに驚きました。グラシオンのプロジェクトに参加されている経緯をお聞かせいただけますでしょうか。
二瓶)南さんは引退直後ということもあり、新たに始められるサッカー指導については、さまざまなカテゴリーに触れていきたいというお考えがありました。長年プロ選手としてレベルが高い所で戦ってきた方ですが、私たちのように下から這い上がろうとしている社会人チームに対して好感を持っていただき、チームアドバイザー兼GKコーチとして携わっていただけることとなりました。
また、澤さんは昔エベスポーツ柏にお越しいただいていたこともあり、柏レイソル時代のサイン入りスパイクを飾らせていただくなどご縁をいただいておりました。年齢を重ねても、常に体を動かし、より良いプレーを追求する姿勢は、選手やスタッフにも非常に良い刺激となっています。来年、ジュニアユースチームを創設する際の監督を務めていただけることになり、大変光栄に感じています。
J1優勝経験を持つ澤 昌克さんが屋台骨を支える
(写真左:澤 昌克さん 写真右:南 雄太さん)
環境に左右されない選手育成が基本理念
―サッカーの中身についてもお伺いしたいのですが、グラシオンが目指しているサッカースタイルやプレーコンセプトはどのようなものでしょうか。
二瓶)まず、私たちには「ボールを握り、自分たちでコントロールするサッカーをしたい」という強い思いがあります。その上で、見ている人もプレーしている選手自身も楽しいと感じられるサッカーを目指しています。トップチームもこれから始動するジュニアユースチームも、勝利を目指すのはもちろんですが、そのプロセスにおいて、このこだわりを大切にしていきたいと考えています。
―ジュニア世代の育成にも力を入れていますが、アカデミーの方針や長期的な育成計画について教えてください。
二瓶)特定のスタイルに固執することなく、多様なスキルを持つ選手を育てたいと考えています。来年から始動するジュニアユースチームから高校サッカーなどへサッカー人生が続くと思いますが、どの環境に行っても活躍できる選手に育てることが育成方針の一つです。具体的には、ボールを持ったときに簡単に奪われないことや、状況判断が優れていることなど、基本的な技術を向上させ、サッカーの理解度を深め、フィールドを俯瞰的に見られる選手を多く輩出したいと思っています。仮にプロになれなかったとしても、サッカーで培った学びが他の分野でも活かされるようであれば、それも素晴らしい成果だと考えています。
―現在は千葉県の社会人リーグ2部に所属しており、9月から後半戦が始まりましたが、今シーズンの戦いぶりはいかがでしょうか。
二瓶)今シーズンから加入した選手が多くいる中で、最初は選手同士がお互いのプレースタイルを完全に把握できていなかったり、個々の得意なポジションとチーム内で最も効果的なポジションが異なることもあるため、多少のちぐはぐさが見られました。しかし、前半戦では怪我人も出る中で、選手たちが勝利への強いこだわりを持って戦い抜く姿勢が光りました。また、グラウンドが整備されたことによりしっかりとしたトレーニングが行えたことで、一試合通して高いパフォーマンスが発揮できるようになりました。練習試合では上位カテゴリーのチームと対戦させていただく中でも良い結果、内容を収めることができており、9月からの後半戦も良い流れを継続し、自信を持って戦っていきたいと思います。
リアルサカつくで愛されるチームを目指す
―二瓶さんのお仕事の内容についてもお伺いしたいのですが、ご自身の業務内容を教えていただけますか。
二瓶)サッカークラブの運営全般と、ホームグラウンドである小さな森のフィールドの運営がメインです。パートナー企業の営業、SNS・ホームページ記事の更新やクラブポスターの制作などの広報活動、アカデミー運営やイベント企画、財務管理など多岐にわたります。
―その中で、特に二瓶さんの活動の中で注力されていることは何でしょうか。
二瓶)現在は認知を高める活動に注力しています。近隣ジュニア大会を開催したり、商工会議所や地域のイベントに参加したりと、活動の幅を広げることで街を盛り上げる一助となりたいと考えています。
トップチームの選手の大半が東葛地区に所縁のある選手であり、今後もこの地域に根ざした選手たちが集まり、大きな力となって戦うことで、ファンや地域の方々が応援しやすくなると思います。そうした地域との結びつきが、チームの魅力の一つになると考えています。
ーグラシオンは東葛地区に根付いた運営をされていますが、サッカーを通じて地域社会に貢献する取り組みや、クラブの社会的な役割についてどのように考えていますか。
二瓶)社会的な役割の大きさを非常に感じています。まずジュニアユースを創設することについて、現在、中学校の部活動のクラブ化が進んでおり、子どもたちは社会や大人の事情でやりたいことができない環境に置かれています。サッカーを頑張りたい学生の受け皿となるチームを作ることは、地域にとっても良い影響を与えると考えています。
また、トップチームの社会人サッカーでは、今年4名の選手がエベスポーツ柏に入社しサッカーに携わる仕事を行っております。それ以外の選手も近隣企業で仕事をさせていただき、働き手を確保するのが大変な社会情勢にある中、サッカーの力で雇用が確保できることは地域社会に貢献できていることではないかと考えています。サッカーの選手人生は長くありませんが、リアルサカつくのようなクラブ運営を肌で感じ、指導者や営業、広報など、クラブが成長する過程で様々なポストが設けられる可能性があることは良いことだと思います。現役を引退した選手にとっても、サッカーに関わるすべてのことに前向きに取り組める環境が整っているのは、非常に価値があると思います。
地域活動に貢献することもチーム理念の一つ
―今後のクラブの展望やビジョンについて、具体的な目標や計画があれば教えてください。
二瓶)トップチームの目標は、とにかく勝利して上位に進むことです。今後アカデミー含めクラブが大きくなる中で、トップチームがクラブの看板となりますので、選手たちがどのようなプレーをし、どのような結果を残すかがサッカークラブ全体に大きな影響を与えると思います。そのため、選手たちにはその意識を持ってプレーしてほしいと考えています。
リーグ戦では、1年に1ランクずつしか上がらないため、昇格には時間がかかります。しかし、天皇杯などの大会では、カテゴリーに関係なく勝利することで上位進出のチャンスがあります。今年はその挑戦を自分たちのターニングポイントとし、毎年確実に成果を築いていきたいと考えています。
最終的には、グラシオンに関わる全ての選手が、ここにいてよかったと思えるような運営を行うことが目標です。環境に特化していくことだけでなく、スタッフや選手たちのマインドを一つにし、皆が集まって価値が揺るがないものになるよう努めていきたいと思います。アカデミーも増やしていく中で、サッカークラブでありながら教育にも特化したチームを目指し、関わる全ての人がここに携わっていて良かったと思えるような運営をしていきたいと思います。
―貴重なお話をありがとうございました!まずは千葉県社会人2部リーグでの優勝を願っております!
編集後記:最初にグラシオンをご紹介いただいた際、「リアルサカつくですよ!」という言葉に、学生時代、寝る間も惜しんでゲームに夢中になっていた頃を思い出しました。実際にグラシオンがJ1に昇格し、日本代表に選手を輩出する未来を考えると、胸が躍ります。もちろん、簡単な道のりではありませんが、一つ一つカテゴリーを上げ、東葛地区がこれまで以上にサッカーで熱狂する街になることを願っています!天皇杯でJチームを破る日も、そう遠くないかもしれませんね!?(RDX Japan編集部)
インタビュアー 上村隆介