インタビュー | 2024.12.19 Thu.
『柔道に育てられ、柔道に夢中になって生きてきました』
彼はインターハイで個人、団体共に優勝、国内外で多くのタイトルを積み重ねている19歳の柔道家、川端 倖明 選手。
物心つく頃から柔道衣に袖を通し、ひたむきに柔道と向き合ってきた。
今回は、彼のこれまでの歩みを振り返り、柔道家として伝えたい想いに迫ります。
川端 倖明 (かわばた こうめい)
生年月日:2005年11月5日
出身地:千葉県 船橋市
経歴:小学校6年生で全国小学生学年別柔道大会50kg級で優勝。国士舘高校に進学後、インターハイ個人戦90kg級と団体戦で優勝し、全国高校選手権や金鷲旗でも活躍。
大学進学後も世界ジュニアではオール一本勝ちで優勝を飾り、全日本ジュニアでも2連覇を達成。アジア選手権団体戦、世界選手権団体戦でチーム優勝に貢献するなど、国内外で多くのタイトルを積み重ねている。
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物心ついた頃には柔道衣を着ていました
ー12月に行われたグランドスラム東京2024はお疲れ様でした。大会から2週間経たないですが現在のコンディションはいかがでしょうか?
川端:大会前は小さなケガが続いてしまい、稽古を積むよりも、研究や反復練習、頭の中でのイメージトレーニングが中心でした。そのため不安もありましたが、試合の中で成長できた部分も多く、課題もたくさん見つけることができました。コンディションは万全ではありませんでしたが、ケガの中でできる限りベストな状態で臨めたと思います。
来年は世界選手権のための選考として3月、4月と選手権があるので、一つ一つ目の前の試合を勝ち切りたいと思います。
ー試合前や試合後に、これだけはやる!っていうルーティンは決めていますか?
川端:ルーティンは特に決めてないです。それよりもルーティンに囚われる方が良くないかなと思っているので。大会後に好きなご飯をたくさん食べるとかはありますが(笑)
ー元々、柔道一家ということもあり、幼いころから試合や大会を多く経験されていますが、最初に柔道を始めたきっかけについて教えてください。
川端:両親が柔道をしていて、指導者だったことがきっかけで、気づいたら幼い頃から柔道衣を着て両親に教わっていました。家でも自然と柔道が身近にあって、試合の映像を一緒に見ることもあり、『柔道ってかっこいいな、自分もやってみたいな』と思うようになりました。
柔道は幼い頃から好きだったんですが、父の指導は強制するタイプではなく、いつも『自分で考える』ことを大事にしてくれていました。そのおかげで、試合でも自分で考えて取り組んだことがうまくいくと、すごく楽しかったのを覚えています。だから柔道に対して嫌だなとか、怖いなとかは子供の頃から全然なかったです。
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ー幼い頃から数々の大会で優勝されていますが、ご自身の中で『柔道家としての自信がついた』と感じたのは、どのタイミングでしたか?
川端:小学生の低学年から県大会等で優勝していて、小学5年生で出場した全国大会で2位になったことで自信がついてきました。幼い頃からテレビで世界大会を見て、自分も日の丸を背負って戦いたいという気持ちを持っていました。
寮生活は柔道に打ち込むための最高の環境
ーその後、国士舘高校に進学し、寮生活をスタートされましたが、寮生活を含めて新しい環境についてどのように感じましたか?
川端:ほぼ毎日、柔道漬けの生活を送っていましたが、とても刺激的で、柔道に一番打ち込める良い環境だと思っています。
高校2年生の時にはインターハイで優勝し、高校3年生では海外に行く機会もいただきました。また、全日本合宿という全国から強い選手が集まる合宿にも参加し、初対面の選手とも柔道を通じて仲良くなれたことが、人間的な成長につながったと感じています。
特に、礼儀や人との接し方については、相手のことをしっかり考えて接する大切さを学び、人間としての成長を実感できました。
また、練習環境にも非常に恵まれていて海外の選手や実業団の選手が毎日のように出稽古に来てくれる環境でした。そのような中で、トップ選手と一緒に練習することができたのは、自分にとって大きな経験になりました。
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ー高校生の頃から海外の大会に参加されていますが、コンディション含めて日本と海外での試合の環境を比較してみていかがですか。
川端:試合の4日前くらいには現地入りすることが多いのですが、計量があるため、最初は現地の食べ物が合わないかもと思い少し不安でした。
ただ、僕は好き嫌いがなく、食べられないものも特にないので食事の内容に関しては特に問題はありませんでした。体重管理の面では気を遣う事もありますし、水道水が飲めない国も多いので、飲食面は特に日本との違いを感じることがあります。
また、試合会場に向かう大会のバスが時間通りに来ないことも、日本とは違うと感じました。様々な環境の違いを経験することで、予期せぬアクシデントが起きたときにも冷静に対応できる力はついたかなと思います。
ー特に大変だった出来事があれば教えてください。
川端:タジキスタンで行われた世界ジュニアの大会は特に大変でした。日本選手団の宿泊したホテルが山奥ということもあり、ネットも繋がらず、食事もなかなか口に合わず…ということがありました。多くの日本選手団が体調を崩している中で試合をせざるを得なかった。ただドクターに整腸剤等をもらったり、スタッフの方々の協力で極力良いコンディションで臨むことはできましたが、今までにないびっくりした出来事でした。ただそれ以上に団体スタッフの経験値の高さ、日本の強さも感じられた大会でした。
柔道に育てられた、その恩を返していきたい
ー学生時代から多くの経験を積んでこられたことは、これからの人生でも大きな糧になると思います。人間としても日々成長されていると思いますが、柔道家として目指す理想像や、追い続けているものがあれば教えてください。
川端:勝負の世界なので、もちろんオリンピックでのメダルや世界選手権での優勝を求めています。しかし柔道は武道なので、人として模範となれるような、人間的に応援される選手を目標にしています。自分の母校である国士舘高校ではしぶとく、泥くさく、勝ちに徹する柔道を培ってきました。国士舘仕込みの寝技と、豪快に1本を取りに行く立ち技、立っても寝ても攻められることができ、どん欲に1本を取りに行く姿勢を多くの方に見てもらいたいと思います。
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ー川端選手の世代には、まだやりたいことが見つからない、分からないという方も多いかもしれません。もし友人にそういった人がいたら、どのような声をかけますか?
川端:僕自身、幼い頃から自分で考えて行動し達成した時に楽しさを感じていました。だから他人に強制されて取り組むのではなく、自分で考えて、何が自分は楽しいと感じるか、その中でしたいことを見つけて取り組んでほしいと思います。
ー今は柔道に全てを注いで生活をしているかと思いますが、柔道以外で好きなことはありますか?
川端:休みの日は友達や同級生とカラオケに行ったり、大学生らしいことをしています(笑) 最近の曲はキーが高いのと難しい曲が多いので昔の曲の方が好きです。THE BLUE HEARTSとかをよく友人と歌っています(笑) みんなと歌える曲なのが特に好きですね。
ー大学生活もしっかり満喫されていますね(笑) 今日は間近で練習を見学させて頂きましたが、柔道は体幹と柔軟性がすごく重要だと感じました。フィットネストレーニングはどのようなことをされていますか。
川端:柔道はフルコンタクトスポーツで組み合うので、直に相手のパワーがかかります。組んでいるだけで体幹の力が付くので、実は高校までは強い選手も含めて、ウエイトトレーニングをしていない人が多いんです。大学からは海外の選手と試合をすることも増えるので、日本人選手も本格的にウエイトトレーニングを開始します。ただパワーがあるに越したことはないですが、それ以上に日本人は技術を大事にしています。
ー柔道家として、国を背負うという強い気持ちをお持ちだと伺いましたが、柔道界全体に対して今後どのように貢献をしていきたいと考えていますか?
川端:まず柔道をいろんな人に知ってもらいたいです。自分はすごく柔道に恩があるので、自分の柔道を通して、いろんな人達に夢や希望を与えることで柔道に貢献していきたいと思います。現在、柔道が世界的に進化しており、国際大会のルールでは海外選手の方が順応していると思います。しかし日本の柔道は昔から勝って当たり前、メダルを取って当たり前という中で、メダルを取り続けているので子供の頃から見ていてすごいと思っています。2025年から一部ルールも変わりますし、日本と海外のルールの違い等、変化に順応していきたいと思っています。
ー柔道家として充実している日々を過ごしていると思います。これからも日本を背負って戦っていかれると思うので、応援しております。
川端:ありがとうございます。
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RDX Japan編集部
インタビュアー 上村隆介