インタビュー | 2026.9.1 Tue
「究極生命体」
彼女のバックグラウンドに相応しいそのキャッチフレーズを背負い、リング上で強い輝きを放つ女子プロレスラーがいる。
元警察官であり、元AV女優でもある、ちゃんよた選手だ。
「プロレスは全く知らなかった」という状態から、「究極生命体」を目指して未知なるプロレスの世界へ足を踏み入れた。
しかしその道のりは、心無いアンチコメントとの闘いなど、幾多の困難に満ちていた。
幾度となく心が折れそうになりながらも、彼女は決して「辞める」ことだけは選ばなかった。
そして迎えた2026年5月、彼女はついに初のベルトをその腰に巻く。
見た目の強さだけではない、心の底から湧き上がる”真の強さ”を手に入れた彼女は、今リングの上で何を思うのか。
プロレスラー・ちゃんよたの生き様に深く切り込む。

ちゃんよた
生年月日:1995年6月30日
出身地:東京都
経歴:Venus of Party The Women’s Championship(初代王者)
元警察官、元AV女優の経歴を持つプロレスラー。YouTube登録者数約16.3万人を誇るフィットネスインフルエンサーとしても活躍。筋トレ好きが高じてスカウトされ、21年にPPPTOKYOでデビュー。「究極生命体」のキャッチを掲げ、数々の葛藤を乗り越え26年5月に念願の初ベルトを戴冠した。
プロレス未経験からのスカウト 会場の一体感に受けた衝撃
ー今回はインタビューよろしくお願いいたします。ちゃんよた選手は現在PPPTOKYOの所属選手としてご活躍されていますが、もともとプロレスを見ていたり、関わりがあったわけではないんですよね。
ちゃんよた)そうですね、プロレスは見たこともなかったですし、当時はルールも知らない状態でした。ただ、格闘技はずっと好きで、警察官時代にハマって見ていたんです。ちょうど女子格闘技が盛り上がっていた時期だったので、よく見ていました。でもプロレスに対しては、格闘技よりも派手な技をやる人や、見た目が派手な人が多い、というぐらいのふわっとしたイメージしかなかったです。
ー過去には警察官をされていた時期があり、武道の経験もおありかと思いますが警察学校時代は柔道と剣道どちらを選択されていたのでしょうか?
ちゃんよた)剣道と柔道を選べたんですけど、剣道はお金がかかりそうだなと思って、柔道を選びました。ただ選んだら男性ばかりで男性の中に混じって柔道をしていましたね(笑)
ーそうだったんですね(笑) プロレスとの出会いは、PPPTOKYO代表の三富兜翔選手からジムで声をかけられたのがきっかけだったと伺いました。最初の印象はいかがでしたか?
ちゃんよた)すごいエネルギーが溢れていて、ギラギラしてるな。怪しい人かな?って一瞬思いました(笑) 紹介とかではなく、本当に普通にジムで急に声をかけられたんです。当時はまだアダルトデビュー前でただ筋トレをして体を鍛えていた時期でした。そこで「プロレスやった方がいいんじゃない?」って言われて「へー」みたいな感じでしたね(笑)


ーそこから何度か同じジムでトレーニングを重ねて、実際にプロレスの試合を見に行くことになったんですね。
ちゃんよた)はい、4、5回くらい一緒にトレーニングさせてもらって、「今度興行があるから見に行きなよ」と誘っていただきました。初めて見たプロレスの会場の一体感と熱量には衝撃を受けました。格闘技は一人の選手を応援するイメージが強いんですけど、プロレスは団体全体をみんなで応援しているような雰囲気があって、そこが印象的でした。
「強い女」に憧れて挑戦を決意した理由
ー実際にプロレスに挑戦しようと思ったきっかけを教えてください。
ちゃんよた)もともと「強くなりたい」という気持ちがずっとあって、筋トレを頑張っていました。プロレスを見に行った時、男子選手に混じって戦う女子選手がいて、それがめちゃくちゃかっこよくて。「強い女」だなと思ったんです。「自分もプロレスをやったらこんなに強くなれるかな」と思って、挑戦を決めました。
ープロレスへの挑戦を決めた時、周囲の反応はいかがでしたか?
ちゃんよた)まずお母さんに報告したら、泣かれました。「危ないから」「人様を殴っているところも、殴られているところも見たくない」と言われて、応援できないと。逆に友達は「すごいね」「人と違うことやると思ってたよ」というふうに、好意的な反応でした。
ーそういった背景が最初にあったんですね。練習を始めてから、デビューまではどれくらいの期間だったのでしょうか。
ちゃんよた)2021年の1月から練習を始めて、9月にデビューしたので、8ヶ月くらいですね。後輩が半年くらいでデビューしたりしてるので、私は結構長くかかった方だと思います。

ー実際に練習を始めてみて、普段のトレーニングとの違いは感じましたか。
ちゃんよた)過酷でしたね。筋トレは自分でコントロールできるじゃないですか。重かったら重さを減らせるし、相手もいない。でもプロレスは相手がいて、相手が何をしてくるか分からないし、投げられたらそれを受け止めなきゃいけない。自分でコントロールできない部分が多いなかで、安全に技を受けなきゃいけないのが難しかったです。
ー特に受け身の練習は大変だったのではないでしょうか。
ちゃんよた)首を鍛えていないと、受け身を取った瞬間に頭を打ってしまいます。投げられて、頭を打って、「あ、今の感じだと頭を打つんだ」って自分で学習しながら、だんだんと強くなっていく感じでした。
実は、練習を始めた時は「デビューしよう」という明確な目標はなくて、ただ「自分が強くなりたいから練習してみよう」という気持ちだったんです。だから、「リングに上がりな」と言われた時は「えー!嘘でしょ!」って感じでした。
ー元々はリングに上がろうとは考えていなかったんですね。デビュー戦は過酷だったと他のインタビューで拝見しました。
ちゃんよた)本来は2対2のタッグマッチの予定だったんですけど、試合前日にパートナーがコロナの濃厚接触者になってしまって、急遽1対2のハンディキャップマッチになったんです。頭が真っ白になりましたけど、「もうやるしかない」と腹をくくってリングに上がりました。試合の内容はほとんど覚えていないですし最後は悔しくて泣きました。

デビュー後の壁と心との闘い
ーデビュー戦から大きな壁にぶつかりましたね。デビュー戦は大きな反響があったと思いますが、2戦目以降プロレスとの向き合い方はどうなりましたか?
ちゃんよた)デビュー戦はみんなに応援してもらえる雰囲気があるんですけど、2戦目以降はもう一人のプロレスラーとして見られるので、そのギャップに苦しむ選手は多いと思います。私自身も、「自分はプロレスに向いてないんじゃないか」と何度も思って、三富さんに「辞めます」と言ったこともありました。
ーそれでも続けられた理由は何だったのでしょうか?
ちゃんよた)単純に「辞めなかったから」だと思います(笑) 今の立場を考えると辞めなくて本当によかったと思っています。
ーもともとアダルト業界でもお仕事をされていて、プロレスデビュー後に心無いコメントとかもあったんですよね。
ちゃんよた)私は周りの目や声をすごく気にするタイプなので、体の怪我よりもメンタルの方がキツかったですね。アンチコメントも最初は半々くらいありました。「倫理的にリングに上げるべきじゃない」といった過去の仕事に対する心無い言葉もありましたし、今でも「彼女の近くにいると菌がうつる」みたいな、海外からのよく分からないただの悪口が来ることもあります。
ーそうしたコメントとは、どう向き合ってきたのでしょうか。
ちゃんよた)プロレスファンの方で、実際に私の試合を見てくれている人はそんなことは言いません。それに、どうせ言われても「その人が私の人生の責任を取ってくれるわけじゃないし」と思うようになりました。アカウントを変えて逃げるような人たちの言葉は、今はもう気にしないです。

「究極生命体」、そして初戴冠
ー「究極生命体」というキャッチが最初見たときから印象的でした。このキャッチはどのように生まれたのでしょうか。
ちゃんよた)もともと私がYouTubeの撮影か何かで、ポロッと「究極生命体になりたい」と言ったことがあって、それを三富さんが「めっちゃいいから、これ使った方がいい!」と提案してくれたんです。自分のバックグラウンドも含めて表現できる、いい言葉だなと気に入っています。
ーすごく、ちゃんよた選手に合ったキャッチだと思いますよ。そして今年5月にはエチカ・ミヤビ選手との試合で初めてベルトを戴冠されました。当時のお気持ちはいかがでしたか。
ちゃんよた)今までプロレスをやってきた一つの集大成というか、「やっと結果が出たな」という感じでした。エチカ選手はずっとスポーツをやってきたアスリートで、持っている運動神経が私とは全然違います。試合の中盤で、エチカ選手の強烈なチョップを20〜30発くらい連続で打ち込まれたタイミングがあって、その時は本当に心が折れそうで、「もうやめてくれ!」って思いました。でも、なんとか持ちこたえて勝つことができました。

リングの上は人生を投影している場所
ープロレスを始めた当初は「筋力的な強さ」を求めていたと思いますが、5年間キャリアを積んで、ご自身の中で「強さ」の定義に変化はありましたか?
ちゃんよた)プロレスを始めた頃は、見た目の強さや筋肉をつけたいという気持ちが強かったんですけど、5年間やってきて、力の強さだけがプロレスラーの魅力じゃないと感じるようになりました。力が強いから試合に勝てるわけでも、応援してもらえるわけでもない。怖くても立ち向かっていく、負けても立ち上がる、自分の生き方に責任を持てる、そういう強さを持ったプロレスラーになりたいと思っています。
ー今後、プロレスラーとして成し遂げたい目標を教えてください。
ちゃんよた)PPPTOKYOの団体内では、今持っているこのベルトをずっと防衛し続けることがまず一つの目標です。
そしてプロレス界全体としては、「プロレスラーといえば誰を知ってる?」となった時に、名前が挙がるような存在になりたいです。ただ有名になるだけではなくて、私の試合を見てくれた人が「自分も頑張ろう」と思えたり、誰かに勇気を与えられるようなレスラーになりたいです。
あとは、何十年経っても語り継がれるような、「この人の代表的な試合といえばこれだ」と言われるような、皆の心に深く刺さる試合を作りたいですね。
ー最後に、ちゃんよた選手にとってプロレスとは何でしょうか。
ちゃんよた)プロレスは「自分自身を変えてくれたもの」です。怖いこともあるし、痛いこともあるし、悔しくて泣くこともある。でもリングに立つと、「強くなりたい」「ここで負けてられない」という気持ちが湧いてきます。
そしてプロレスは、かっこいい部分だけじゃなくて、泥臭いところや、自分の弱い部分も全てさらけ出して戦っていける場所です。人生って楽しいことばかりじゃなくて辛いこともいっぱいあるけれど、リングの上では辛い感情や悔しい感情を出しても、それが自分のエネルギーになって戦っていける。
だからプロレスは、私の今までの人生を投影している場所であり、私の人生をさらけ出せる場所ですね。
ー過去の葛藤から現在の強い思いまで、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。プロレスラー・ちゃんよたの今後のご活躍を期待しております!

撮影協力:WONDER LIFE GYM 茗荷谷
編集後記:「究極生命体」というキャッチフレーズ。最初からバックグラウンドとも相まって、良いキャッチだなと思っていましたが、三富さんもそれを聞いて即採用されたエピソードを伺い、「私も三富さんと同じ感性を持っているのかな」と親近感を覚えてしまいました(笑)
プロレスラーであり、インフルエンサーでもある彼女に対し、もしかすると「破天荒」なイメージを持たれている方もいるかもしれません。しかし、実際にお話を伺うと、社会性があり受け答えも非常にしっかりされていて、「きっとどの世界にいっても成功できる人なんだろうな」と強く感じました。
そんな彼女の本当の強さは、「自分には向いていない」と悩みながらも逃げずにリングに立ち続けた泥臭い経験の中にあります。自分の「弱さ」を受け入れ、内面からの強さを手に入れたプロレスラー・ちゃんよた。今後のさらなる飛躍から目が離せません。
(RDX Japan 編集部)
インタビュアー 上村隆介


