GLORY BEYOND DREAMS 井田 祐成選手 インタビュー

インタビュー | 2025.3.25 Tue

一度は諦めたプロの道、ここで上を目指す決意が芽生えた

彼は、学生時代にサッカー名門校でJリーグ入りを期待された井田 祐成 選手。

しかし、度重なる大怪我に悩まされ、サッカーから離れる決断を下します。

そんな時に出会ったのが、FC GRASION 東葛。

今期はキャプテンとして、千葉県社会人リーグ1部優勝を目指してチームを引っ張る役割を担っています。

今回は、彼のサッカー人生を振り返り、FC GRASION 東葛との出会い、そして今後のキャリアについてお話を伺いました。

井田 祐成 ( いだ ゆうせい)

生年月日:2001年04月28日
出身地:東京都日野市
ポジション:ミッドフィルダー

経歴:
流通経済大学付属柏高校 → 流通経済大学 → FC GRASION 東葛

全国屈指の強豪・流経大柏でプレー後、流通経済大学に進学し関東大学リーグでプレー。度重なる大ケガにより公式戦の出場は限られたが、リハビリを通じて「怪我をしても成長できる」という強いメンタルを獲得した。

卒業後、FC GRASION 東葛に加入し、中盤の要として千葉県社会人リーグ1部の昇格に貢献。2025年シーズンからはキャプテンを務める。

1部昇格は、嬉しさよりも安堵だった

ー千葉県社会人リーグ1部への昇格、おめでとうございます!2025年シーズンからは、いよいよ1部リーグでの戦いが始まりますが、まずは昇格が決まった瞬間の率直なお気持ちをお聞かせください。

井田)千葉県社会人2部リーグで勝つこと、優勝することをチームの大前提としていたので、まずは昇格が決まって嬉しかったと言うよりかはホッとしたという気持ちの方が強かったです。去年の序盤は開幕戦では勝利こそしたものの、チームとしての方向性がまだ浸透していなかったこともあり、正直不安もありました。

しかし、試合を重ねる中で徐々にチームの方向性が定まり、『自分たちはしっかり勝ち上がっていかなければいけない』という自覚がメンバー全体に芽生えていきました。その意識の変化が、最終的に1部昇格につながったのだと思います。

2024シーズン、千葉県社会人リーグ2部で見事優勝

ー今年は、千葉県社会人リーグ1部に主戦場を移すわけですが、周りからのプレッシャーや期待など、どのように感じていますか。

井田)これまでは『勝って当たり前』という状況の中で、目の前の相手にしっかり勝たなければならないというプレッシャーが常にありました。これからは、これまで自分たちが積み重ねてきたものをしっかりと表現し、自分たちのサッカーを見せて、圧倒的な力を示していく必要があると感じています。

戦術自体に大きな変更はありませんが、1部では求められるレベルがさらに高くなると思うので、しっかり地に足をつけて戦っていきたいと思っています。

ー今シーズン、井田 選手がキャプテンに就任をされましたが、キャプテン就任の経緯を教えていただけますか。また、今後チームをまとめていく上で特に大切にしていきたいと思うことは何かありますか。

井田)昨シーズン、キャプテンが怪我であったり選手交代してから、自分がキャプテンマークをつける機会が増えてきて、『もしかしたら自分がキャプテンになっていくのかな』と感じてはいました。チームが勝つために、周囲と積極的にコミュニケーションをとっていく中で、監督やフロントの方から『キャプテンをやってほしい』と声をかけられ、就任が決まりました。

とはいえ、これまでキャプテンの経験はまったくありませんし、自分自身、性格的にも『キャプテンっぽくない』と思っています。だからこそ、チーム全体でリーダーシップを持てるように、ポジションごとにリーダー役をつけるなどして、それぞれが自覚を持てるように取り組んでいます。自分がキャプテンではありますが、『全員がキャプテン』という意識で、それぞれがチームを引っ張れるような環境をつくっていきたいと考えています。その中でも、自分はキャプテンとして、一人ひとりに合った話し方や接し方を意識していますし、全員を上のステージに連れていくつもりです。

ーキャプテンという役割と同時にプレイヤーとしてはどのようにチームに還元していきたいですか。ご自身のプレースタイルや強み、特徴をどのように考えていらっしゃいますか?

井田)自分は今真ん中辺りのポジションをしているのですが、元々は攻撃的な選手だったので自分が得意なキックや、ドリブルをうまく出しつつ、しっかり戻るところは戻って、守備でも貢献できたらなと思っています。これまでに自分が求められていることと、自分ができないことでもチームに必要なものをしっかり考えて行動していって、今、自分というプレーヤーが出来上がっていると思います。

プロへの夢を諦めた先に、もう一度“やりたい”が芽生えた

ー尊敬している選手だったり、プレーを参考にしている選手はいらっしゃいますか?

井田)ずっと好きな選手は、アルゼンチン代表のディ・マリア選手です。小さい頃からずっと好きで、今でも動画をよく観ています。自分のプレースタイルが似ているかと言われると、必ずしもそうではないかもしれませんが、それでも昔から憧れて見続けている選手はディ・マリアです。

ーディ・マリア選手といえば、気の利くウィンガーという印象が強いです。引き立て役にもなれるし、自分が主役としても輝ける選手だと思うのですが、そういったプレースタイルに惹かれた部分はありますか?

井田)ディ・マリア選手は本当に魅力的な選手ですが、自分は彼のようなプレースタイルにはなれなかったですね。気づけば、自分は他の人と同じようなタイプのプレーヤーではないと実感するようになりました。その中で、『自分に求められていることは何か』『自分にはできないけど、チームに必要なことは何か』をしっかり考えて行動するようになり、今の自分というプレーヤーが少しずつ出来上がってきたと思っています。

ー井田選手はこれまで高校や大学の名門校でプレーしてきた中で、自分が一番成長したと感じた瞬間はどのような時でしたか?

井田)サッカーの技術面ではなく、精神面が一番成長したのは今、社会人になってからだと感じています。学生時代から怪我に悩まされ、これまでに手術を4回経験しています。大きな怪我をするたびに自分の中で何かが変わったのかもしれません。高校1年生の終わりに第五中足骨を骨折して、3~4ヶ月の離脱があり、高校2年生の終わりには逆足の第五中足骨と舟状骨を骨折し、再度手術して3~4ヶ月離脱しました。大学では1年生のときに前十字靭帯を断裂し、復帰戦でまた前十字靭帯断裂と半月板を損傷してしまいました。その影響で、大学の最後の方までほとんどプレーできなかったですね。

セントラルミッドフィルダーとして中盤を支える

ー何度もけがを乗り越えて、それでもなお、社会人リーグでサッカーをプレーしたいと思った原動力は何だったのでしょうか。

井田)学生時代にサッカーを続けたいと思えたのは、自分に可能性を感じていて、『絶対にプロになれる』と信じていたからです。その時は、『プロになれないわけがない』と思っていましたし自信もありました。ただ、怪我を繰り返す中で進路を決める年齢に差し掛かり、『これからも怪我と向き合い続けなければならないのなら、サッカーで生きていくのはきついな』と感じ、プロの道を一度諦めました。

しかし、大学を卒業する直前に、高校時代の監督からFC GRASION 東葛(以下、グラシオン)の話をいただき、『見に来てみないか?』と誘われました。その時に思ったのが、今までは例えば高校だったらプレミアリーグ、大学だったら関東一部と今まで一番上のリーグに属していた自分が、下から上がる経験をしていなかったことに気づきました。グラウンドやクラブハウス、筋トレルームなどを見て、このチームで上位リーグに上がる経験ができたら、自分のサッカーキャリアがさらに面白くなるだろうと感じ、それが決め手となりました。

これからもグラシオンを助けられる存在でありたい

ー昨年の『小さな森の家フィールド』のグランドOPENイベントに私も伺いましたが、非常に素晴らしいクラブハウスだと感じました。そのような施設面も含めて、グラシオンの特徴や強みについてはどのように感じていますか?

井田)グラウンド施設は圧倒的な強みだと思います。社会人チームだと、お金を出し合ってグラウンドを借りたり、各自でジムに契約して通ったりと、色々と難しい問題がありますが、グラシオンではそのような問題が一切なく、サッカーに集中できる環境が整っています。それがまず圧倒的な魅力だと思います。

また、チームの魅力としては、これからのチームなので、伝統がない分、今の自分たちがすべてを作り上げている段階です。例えば、チームがJ1に昇格したとしても、今自分たちが戦っている戦い方や考え方、文化が受け継がれていくと思います。そういった環境に携われるのは、ただサッカーが上手いだけではできませんし、運が良い人しか経験できないことだと思うので、それが魅力だと感じています。

グラシオンにはサッカーに専念できる、理想的な環境が整っている

ー社会人1部リーグに昇格したことによって、練習の雰囲気や、チームの雰囲気に変化はありましたか?

井田)ありましたね。まず、社会人チームなので仕事の関係で参加できる人数が少なかったのですが、今は自分や後輩を中心に、上のレベルを目指してサッカーをしたい人たちが集まっており、紅白戦ができるくらいの人数が常に練習に参加しています。

また、意識も大きく変わったと思います。以前はなんとなく『上を目指そうね』といった気持ちでやっていた部分がありましたが、今は、言ってしまえば『なぜこのカテゴリーにいるの?』というレベルの選手たちが集まっており、何をしてどうすれば勝てるか、どんな練習をしなければならないかを全員が理解しています。
そのため、練習の強度や声掛けの仕方一つにしても、レベル感が上がったと感じています。

ー強くなるために、いい雰囲気が作られてきているんですね。現在、ご自身がプレーする一方で、小学生など下の世代にも指導されていると伺っていますが、その点についてもお聞かせいただけますか?

井田)今はスクールで指導していますが、吸収の速さが全然違うので、非常に面白いですね。自分が今まで感じたことを伝えると、それをすぐに実践してくれて、すぐに結果として現れるんです。ジュニア年代の小学生の時に、こんな素晴らしいグラウンドで、コーチたちから教わると、こんなにも成長できるんだなと実感しています。

スクール生も一丸となって、グラシオンというチームの一員になっている実感があり、スクール生全員が同じユニフォームを着ているんです。親御さんをはじめ、多くの人たちが見に来てくれるので、そういった子たちに教えられる環境は本当にありがたいと思っています。

グラシオンのスクールコーチとしても活動している

ー現在、グラシオンにはJ1経験者の南雄太さんや澤昌克さんがいらっしゃいますが、そういった経験豊富な選手がチームに加わることによって、どのような良い点があると感じていますか?

井田)澤さんは一緒に練習をしてくれて、南さんはGKコーチとして関わってくださっていますが、彼らは自分たちがまだ見たことのない景色を実際に見て、肌で感じてきた方々なので、その言葉は非常に説得力があります。同じことを言っていても、南さんや澤さんが言うと、自然と心に響くというか。澤さんは練習でも非常にアグレッシブに動き回り、私たちと同じように一緒にバリバリと取り組んでくれていますし、南さんはミーティングの中で、セットプレーの確認など、細かい部分までしっかり関わってくれていて、いい影響を与えてくれていると感じています。

ーこの環境をうまく活かして、更に上のステージに進んでいってほしいと思いますが、今後、グラシオンの選手としてどのような未来を描いていますか?

井田)自分が戦力として貢献できるうちは、全力でやり続けたいと思っています。そのうえで、怪我でキャリアが終わるかもしれませんし、他の若く将来有望な選手が出てくるかもしれません。先のことはわかりませんが、グラシオンが上のリーグに進み、日本で有名なチームになるために、選手としてその一助となれるように行動していきたいと思っています。

ー最後に、関わってくださっている皆様にメッセージをいただけますか?

井田)自分たち選手が一番活躍しやすい環境を作ってくださっていることに、毎日感謝しています。監督、コーチ、フロントの方々はもちろんですが、地域の方々、スクールの親御さん、スクール生、スポンサーの皆様も含め、全ての方々が一つになって応援してくださっています。私たちはその環境の中で勝たなければならないという責任を感じており、皆さんに勝利という形で恩返しできるよう、毎日練習に励んでいます。これからも頑張っていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

ー今期も期待しております!主将としてチームを引っ張り、昇格を果たしてくれることを心から祈っています!

編集後記:井田選手とのインタビューを通じて、サッカーに対して真摯に向き合い、人生を懸けてきた想いが伝わってきました。プロ入りの実力を持ちながらも、怪我で一度は諦めたサッカー人生。しかし、彼にしかできないプレーが今後、グラシオンのレベルを引き上げることを確信しています。主将として、そしてグラシオンの選手として、これから一歩ずつ階段を上がっていく彼の姿を楽しみにしています!

(RDX Japan編集部)インタビュアー  上村隆介

FC GRASION東葛

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