インタビュー | 2025.10.10 Fri
『武田光司 先輩は最初見たときはヤンキーかと思いましたよ(笑)』
そう笑顔で語るのは、武田選手のレスリングの後輩であり、RDX JAPAN初のレスリングアンバサダーを務める山﨑弥十朗選手と吉村拓海選手。
幼少期から共に切磋琢磨してきた二人に、子ども時代の思い出、彼らから見た武田選手の姿、そしてこれからのビジョンについて伺いました。

山﨑 弥十朗 (やまさき やじゅうろう)
生年月日:1997年5月7日
出身地:埼玉県
所属: 株式会社サイサン
経歴:天皇杯 令和4年度 全日本レスリング選手権大会 フリースタイル79kg級 優勝。
現在はレスリングと並行しながら総合格闘技にも挑戦し、2025年9月のDEEPでプロデビュー戦に臨み、初勝利を収めた。

吉村 拓海(よしむら たくみ)
生年月日:1997年11月25日
出身地:埼玉県
所属:トライブ東京MMA
経歴:アジアジュニア選手権準優勝、国民体育大会3位など国内外で実績を残し、全日本社会人オープンでは優勝を果たす。現在はレスリングを主軸としながら、来年からは総合格闘技の舞台にも挑む予定だ。
初めて会った山﨑にボコボコにされたあの日
上村)今回はRIZIN、DEEPで活躍する武田光司 選手のご紹介で、お二人の対談インタビューが実現しました。まずはお二人の出会いから聞かせてください。最初に顔を合わせたのはどのタイミングだったのでしょうか?
山﨑)最初どういった声かけがあったのかは全然覚えてないですね(笑) いつの間にか知り合いになって仲良く遊んでました。
吉村)多分、最初は僕が「ピアブレッド」というジムに行ったときですね。幼稚園を卒業して、小学校に上がる頃だったと思います。そこで山﨑と初めて練習で組むことになった記憶があります。
山﨑)そうそう、ただその時から体格も大きめで背の順ではいつも一番後ろとかだった。吉村は小柄で、その当時はかなり体格差がありましたね。
吉村)初めての練習で、彼と組んだんですけど…まあ、正直「ボコボコにされた」っていう記憶が強いです(笑) でもそれで一気にレスリング熱に火がついたところもあります。
上村)その当時からレスリングを楽しいと思ってやっていましたか?
山﨑)僕はもともと水泳やサッカーもやっていたんですけど、レスリングに触れて「相手を倒す」という体験にすごく魅力を感じたんです。個人競技で、勝敗が明確に出る。そのスリルが楽しくてのめり込みました。
吉村)僕は4歳の頃からやっていて、週2回の練習が当たり前の生活でした。だから「楽しい」とか「嫌だ」とか、そういう感情よりも「行くのが普通」という感じでした。小学生の頃から習慣になっていて、生活の一部でしたね。
上村)流石に子どもの頃から「大きくなってもレスリングをやっていこう」みたいな話は2人でしなかったですか?
山﨑)当時はそんな話しをしたことないよね? お互いそこまで意識していなかったですね。
吉村)将来の話はほとんどしてなかったですね。ただ、強くなりたい、勝ちたいという気持ちだけで子供の頃はやっていた感じです。

上村)中学は埼玉栄中に進まれたと思いますが、受験勉強をしながらレスリングの練習をしていくのは大変だったんじゃないですか?
吉村)受験が一番きつかったですね。その頃から中学、高校でもレスリングやっていこうって話した記憶があります。ただ受験するなら当然勉強もしなきゃいけないよなって(笑)
山﨑)僕は正直、勉強が苦手で…(笑) 吉村の方が塾にも行ってるし、テストの点数も良くて。当時から「自分は勉強では勝てないな」と思ってました(笑)
上村)今の2人を見てるととても仲が良いなという印象ですが当時はケンカしたりとかはありましたか?
吉村)ほとんどないですね。ジュースをめぐってのちょっとした小競り合いくらいかな(笑)
山﨑)大きなケンカは一切なかったよね。階級が違うからってのもあったと思うけどライバル視するよりかは一緒に辛い練習を体験をしてきたから仲間意識の方が強かったですね。
上村)ライバル関係のような意識はなかったんですね。
吉村)実際には階級が違ったので、直接試合で当たることはなかったのが大きいかもですね。試合会場ではいつも見れるときはお互いの試合を見てたし、僕が軽量級の試合を先に終えて、そのあとに重量級で出る山﨑の試合を見てました。
山﨑)僕は重量級で試合が後ろの方なので軽量級を見れるのは限られてますが、いつも自然と吉村の試合を見に行ってました。彼が決勝まで行くことも多かったので。
吉村)僕は決勝で負けることが多くて、いつも悔し涙を流してました。決勝で負けた後に山﨑の試合を見るとやっぱりこいつは強いなと思うし、「追いつきたい」という気持ちは大きかったです。ライバルというより、子供の頃から刺激を与えてくれる存在でした。
上村)その当時に、仲間意識が芽生えた厳しい練習があったら教えてください。
山﨑)当時は理不尽だなと感じた練習は山ほどあります(笑) 「ボール」と呼ばれる練習があって先生がソフトボールを投げて、それを走って取りに行くんですけど、いつ終わるかは先生の気分次第なんですよね。
吉村)ルールがはっきりしてなくて、「シャトルランのランダム版」みたいな感じだった。今日は何回なのかも分からない。だからいつ終わるのかが分からないので精神的にもキツかったですね。
吉村)当時は「これ、何の意味があるんだろう?」と疑問に思うこともあったけど、考え始めると全部が疑問になっちゃうので、ただ言われた通りやるしかなかったですね。
山﨑)本当それ(笑) ひたすら先生に言われたことを信じてやりきるしかなかったですね。
上村)減量のときも一緒に我慢していたことで、仲間意識が強まったところはありましたか?
吉村)僕は減量が必要だったので、遠征のときは部屋にこもって食べ物の誘惑を避けてました(笑)
山﨑)僕は減量がなかったので、外出して遊んだり、自由に動くことが多かったですね。
吉村)でも減量中は他の人がジュースとかジャンクフードを食べているのを見るのが好きでした.(笑) YouTubeでジュースを飲む動画を見たりも好きですし。山﨑に無理やり食べさせて「代わりに満足する」みたいなこともやってましたね(笑)
上村)なるほど(笑) メンタル維持の方法でもあったんですね。
吉村)そうだと思います。やっぱり減量は孤独との戦いなので(笑)
中学時代から迫力満点だった武田光司 先輩
上村)ご紹介頂いたご縁もありますし、お二人にとって、RIZINでも活躍する武田光司選手の存在はかなり大きいと伺っています。武田選手との出会いのきっかけから教えてもらえますか?
山﨑)中学に入った頃、栄高校の先生がやっていた「栄魂」で出会いました。当時、武田さんは中学3年生。体重も90kgくらいあって、学ラン姿で現れたときは正直「ヤンキーなのかな?」って思ったくらいの迫力でしたね(笑)
吉村)圧倒的な存在感でしたよね。練習に対して厳しくて、スパーリングでは絶対に点を取らせてくれない。技術や言葉よりも「背中で語る」タイプの人です。
山﨑)でも、練習後は優しいんです。短い言葉とか、ちょっとした所作が心に残る。厳しさと優しさを併せ持つ先輩というか、面倒見も凄くいいんですよね。プロデビュー戦もセコンドとして試合についてくれたんですが安心感がすごいです。自分をよく知っている人から「これをやれ」と言われると、迷わず遂行できる。技術以上にメンタル面で支えてくれる存在です。

上村)武田選手は、メディアやSNSの使い方についても強い意識を持っていますよね。
山﨑)私生活と公の場で明確に切り替えるんです。記者会見では言葉の一つ一つを慎重に選びますし、ここ切り取られるだろうなって所を意識して臨んでると思います。
吉村)「武田光司というブランド」を確立する意識が本当に強いです。SNSの運用についても後輩にアドバイスしてくれて僕らもその姿勢を学んでいます。今の総合格闘技の世界では、強さだけじゃなく「どう見せるか」がすごく重要になっているからこそ武田さんから学ぶ部分は多いですね。

上村)今後、3人で何か配信などもやれたら面白いですよね。
山﨑)確かに武田さんと3人で話す企画なんて面白いと思います。
吉村)最初に武田さんに下ネタ禁止と伝えておかなきゃですね(笑) でも本当に、そういう「人となり」を見せる機会を試合以外でも増やしていきたいです。
RDXを使って初めて実感した、防具選びの重要性
上村)お二人はRDXアンバサダーとしても活動もしてくれていますが、今までスポーツブランドとお仕事する機会はありましたか?
山﨑)RDXのアンバサダーになる前は、企業やブランドと関わる経験はほとんどなかったです。レスリングって基本的に「シューズがあれば練習できる」競技なので、用具スポンサーは少なかったんですよ。
吉村)武田さんからRDXグローブを譲ってもらったとき、今まで使ってたものとの違いを実感しました。手首が「ぐにゃっ」となるグローブもあって、「あ、これは危ないな」と使いながら思ってました。武田さんに紹介されてから防具選びは本当に大事だと学びました。
山﨑)防具次第で怪我にも直結するので選手にとって防具は凄く大切ですね。そこを支えてくれる企業さんは本当にありがたいです。
来年は2人にとって勝負の年になる
上村)直近では9月に山﨑選手のプロデビュー戦が行われましたよね。アマチュア大会でも山﨑選手はやばいって評判でしたよ。
山﨑)そう言ってくれて光栄です。デビュー戦は勝つことはできましたが、最初に映像を見返したときは「まだまだだな」と思ったんです。でも改めて何度も見直すと「意外と良い試合だったかもしれない」と感じるようになりました。周囲からの評価もあって、自分の認識も少し変わりました。
吉村)僕から見ても、いいデビュー戦だったと思いますよ。山﨑らしい試合だった。
山﨑)セコンドに武田さんがいたのも大きかった(笑) 今後も「元気と勇気を与える試合」を続けたいです。

上村)お二人のこれからの目標について教えてください。
山﨑)来年はDEEPで3〜4試合を積んで、ライト級チャンピオンの野村駿太選手を視野に入れています。その過程でRIZINへの出場も狙っていきたい。タイトル挑戦前でも、チャンスがあれば挑戦したいです。
吉村)僕は来年2〜3月に行われるDEEP「フューチャーキング」トーナメントで優勝して、正式にプロデビューしたいと思っています。階級はフライ級かバンタム級で悩んでいますが、いずれにしてもDEEP王者、そしてRIZINの舞台に立てるように頑張ります。
上村)今後のお二人の活躍が楽しみです。最後に、応援してくれる方々へメッセージをお願いします。
山﨑)デビュー戦は無事に勝てました。内容を振り返って良い試合だと思えるようになったので、これからも「元気と勇気を届ける試合」を積み重ねたいです。ぜひ応援を続けていただければ嬉しいです。
吉村)僕は「熱いファイト」で観てくれる人の心を動かしたいと思っています。日々の練習でそれを形にして、これからの挑戦に注目してもらえたら嬉しいです。
編集後記:今回のインタビューでは、終始お二人の仲の良さが伝わってきました。厳しい練習を一緒に乗り越えてきたからこそ、あの強い仲間意識があるんだと思います。来年は二人にとって大きなチャレンジの年。新しいステージで躍動する姿を見られるのが本当に楽しみです! そして、この機会をつないでくださった武田光司選手、本当にありがとうございました。(RDX Japan編集部)
インタビュアー 上村隆介


