インタビュー | 2024.4.4 Thu.
『アマチュアMMAの大会が少ないという課題に向き合いたい』
彼はアマチュアMMAコンペティション AMMACの実行委員長を務める橋本貴さん。
普段は現役の看護師でもあり、看護学校の講師として活動している。
団体の垣根を越え、経験を積み、そしてプロになれるような場を提供したい。
そしてアンダーグラウンドではなく社会性のある正統派のスポーツとして認知を広げたい。
アマチュア選手に寄り添うことで、MMAの未来を切り開こうとするAMMACの活動について、橋本AMMAC実行委員長に現状と未来のビジョンをお聞きしました。
橋本 貴 (はしもと たかし)
合同会社SAMANT 代表
JMOC認定MMA競技オフィシャル
生年月日:1977年12月23日
出身地:東京都
経歴:アマチュアMMAコンペティションAMMACの実行委員長を務める。現役の看護師、看護学校の講師として活躍する傍ら、都内でMMAジムの代表も務める。
アマチュア選手にとって一番重要なのは試合経験
ー橋本さんは一般社団法人日本MMA審判機構 (以下「JMOC」)が競技運営で協力するアマチュアMMAコンペティション( 以下「AMMAC」)の実行委員長を務めております。まずはAMMACがどのような大会なのかご説明をお願いします。
橋本)アマチュアのMMAの大会で、裾野を広げることをコンセプトとしています。始めたばかりの初心者の方から、プロを目指す方まで幅広く出られるような大会を開催したいと思い立ち上げました。
ーアマチュアにフォーカスをして大会を始めようと思った経緯を教えてください。
橋本)まず、日本においてアマチュアMMAの大会が少ないという課題があります。海外では、アマチュア選手が何十試合も顔面パウンドを含むルールで戦い、そのままプロに転向する例が多いです。しかし、日本ではそのような環境が整っておらず、アマチュアでの試合経験が不足しているまま、プロに挑戦する選手が目立ちます。日本のMMA界が世界と比較して遅れを取っているのはこのためだと感じています。
次に、MMAの基盤拡大の必要性も挙げられます。私が競技オフィシャルとして認定を受けているJMOCでは、ジャッジやレフェリーのトレーニングを行っていますが、これらを志す人々には実践の場が限られています。そのため、実践を通じて技術を磨く機会を提供するためにも大会の開催が必要であると考えました。
ーMMAの審判を志す方は多いですか。
橋本)多いようで、直接の管理運営は私はしていませんが、JMOCの方で定期的に「ジャッジ・トレーニング」を開催しており、そこには多くの方が参加されていて、その中では実際にプロの試合でジャッジをやりたいという方とかもいらっしゃるようです。
ーどのような方がMMAの審判を志していますか。
橋本)自身に格闘技の経験がある方、未経験の方、様々です。ただ、日本においては野球やサッカーと比べると圧倒的に収入が少ないため、別にお仕事をされている方がほとんどです。MMA競技をしっかりと公平性のもとに進行でき、さらに安全性を確保することに審判としても魅力を感じてくれています。
ー日本のアマチュア格闘技界において、今後の改善点を挙げていただけますか。
橋本)団体によってルールが大きく変わってしまうと選手が対応できないので、ルールの統一がある程度必要なのかなと思います。また、開催数が少ないのでもっとコンスタントに大会を開催することも課題かなと思います。日本でもアマチュア修斗さんなど様々なアマチュア大会がありますが、やはり地域も限定されていますし、なかなか開催頻度も多くはないのが現状です。
AMMACの大会に参加するアマチュア選手にとって、最大のメリットは実際の試合経験が積める場を提供することだと思います。ジム内でのスパーリングはありますが、実際の試合とは異なるため、実践機会は非常に貴重です。スパーリングと試合は全く別物であり、試合での経験は選手の成長に不可欠です。
ールールが大会ごとに異なっているのは日本独特のことなのでしょうか。
橋本)海外でも地域によって規定が異なることはありますが、日本ではさらに細かい部分での違いがあるように感じます。例えば、ハンドラッピングの規定もプロとアマチュアで異なる所もあります。パウンドの有無や、立っての顔面膝なども各団体の方針によって異なることがあります。ただし、これらの細かい規定も今後はなるべく統一されることが望ましいと考えています。統一されたルールによって、選手が不利益を被る可能性が減り、競技全体の公平性が確保されると思っています。
ーアマチュアの選手が、アマチュアの大会に何を求めているかは、大会の運営から感じ取れることがありますか。
橋本)プロを目指して経験を積みたいという方が圧倒的に多いですが、最近の格闘技ブームもあり、趣味の一環で格闘技をしたいという方も多くいらっしゃいます。
ー今後、どのようにAMMACの認知を広げていきたいと思われていますか。
橋本)今は関東地区でのMMAの裾野を広げるために、2ヶ月に1度大会を開催しています。将来的にAMMACで活躍した選手がプロに上がれるような、システム作りをしていきたいと思っております。団体の垣根を越えて、経験を積み、プロになれるような場にしていきたいです。また、アンダーグラウンドではなく社会性のある正統派のスポーツとして認知を広げたいとも考えております。
安心して格闘技に触れられる環境を提供したい
ー格闘技の大会を運営する際に、安全面や医療体制をどのように整えていますか。
橋本)競技として発展させるにも、安全面は徹底的に考えております。例えば使用するギアがゆるいものや、ずれそうなものは一切禁止にしております。また、競技のサポートとしてメディカルスタッフを用意しております。試合前、希望者には試合後、試合中にアクシデントがあった時にもメディカルチェックを入れております。
また、AMMACでは私自身が看護師であり、さらに経営している法人から救急対応もしている看護師が入っているので、様々な場面に対応できると思います。
ー今は看護学校の講師でもありながら現役の看護師として現場にも出られています。看護の世界に入ったきっかけは何だったのですか。
橋本)親戚に看護師がいた影響です。親戚からの勧めで看護師が実際に何をするのかも知らずに看護学校に入りましたが、資格を取り、もっと学びを深めたいと思って、大学でも学びを深めて面白さを知りました。
ー看護の教壇にも立たれていますが、この経験がAMMACの大会に対してどのような影響を与えていますか。
橋本)私が経営している法人は、自分らしく生きるために常に学んでいこうというコンセプトなので、趣味や生き方も含めて人をサポートしたいという思いは、看護師・看護教員をしていた時の考えが強く出ているのかなと思います。
ー橋本さんと格闘技の繋がりはいつ頃からあったのでしょうか。
橋本)小学生の頃に極真空手を始め、中学生の頃に辰吉丈一郎さんに憧れてボクシングを始めました。高校でも剛柔流空手を部活で行い、K-1が盛んな時代に入ってからはキックボクシングも始めたので、小学生から今年47歳に至るまでずっと格闘技と繋がりがあります。
ー今は格闘技のジムも運営されていますね。
橋本)2020年の3月頃、ちょうどコロナで緊急事態宣言が出たころにプレオープンしました。元々ジムでキックボクシングや柔術を仲間内で楽しくしていて、みんなで楽しく格闘技に触れ合える場があればいいなという軽いノリで作りました。
ージムの会員の方はどのような方がいらっしゃいますか。
橋本)プロになりたいという子もちらほら出てきていますが、まだ圧倒的に趣味やエクササイズ感覚の方が多いです。キッズ会員の方が多くいますが、一般クラスでは若い子だと中学生ぐらいから、上だと50代の方も様々な年代の方が来てくれています。MMAのジムとして、キックボクシングクラスと柔術クラスがあるので、そこからMMAクラスに流れて来る方も多いですが、ジャンルだとキックボクシングが一番人気です。
純粋に格闘技を楽しんでもらいたい
ーAMMACの今後の発展について将来的なビジョンはありますか。
橋本)構想としてはトーナメント制の導入を考えており、将来的には全日本のような位置づけで広げて行いたいです。また、世界のMMA大会に向けて繋げていければいいなと思っています。
ありがたいことにAMMACの知名度も上がってきているようで、4月大会は過去最高のエントリー数をいただきました。今はケージも常設されている所を借りていますが、将来的には観客も動員できると良いですね。
ーAMMACに出場した選手たちの将来について、期待していることはありますか。
橋本)AMMACで実戦経験を積んでくれた選手の方が、プロで活躍することを一番願っています。実際にAMMACに出た選手が、DEEPの前座のアマチュアマッチに出たこともあったので、そのような所でプロの本選に出られる選手が育ってほしいです。あとは純粋に格闘技を楽しめる人が増えてくれればいいかなと思います。
キックボクシングやグラップリングしかしてこなかった選手も軽い気持ちで出られるように顔面攻撃が一切なく、グランドも30秒という制限とルールも設けております。
ー今後の発展に向けて克服すべき課題はありますか。
橋本)出場カテゴリーに偏りが出ていることが課題ですね。例えばキッズや女性のエントリーがあっても試合が組めずにキャンセルになってしまうことがあるので、キッズや女子ルールも強化していかなければいけないなと考えています。
ー改めて、今後の大会の目標をお聞かせください。
橋本)AMMACが選手の方たちの選択肢の一つとなり、日本のアマチュア格闘技の一つとして根付いていければいいかなと思っています。
ーインタビューありがとうございました!今後もAMMACの発展に微力ながらお力添えをさせていただきます。
アマチュアMMAコンペティション 『AMMAC』
RDX Japan編集部
インタビュアー 上村隆介