BRIDGE OF DREAMS THE TEMPEST 代表 渡部 翔太

インタビュー | 2024.8.2  Fri.

キックボクシングのアマチュア日本一を決める大会を作りたい

RDX JAPANは、メインサプライヤーとしてアマチュアキックボクシング大会『THE TEMPEST』とパートナーシップを締結しました。

現役時代から、格闘技業界を自ら変えたいと考え、大会の構想を練ってきたのが『THE TEMPEST』代表の渡部 翔太さんです。

『強い選手が集まる大会であれば、自然とベルトの価値も上がっていく』

今回は、THE TEMPEST第一回大会を迎えるにあたり、代表の渡部さんに大会運営について、そしてその想いを語っていただきました。

渡部 翔太 (わたべ しょうた)

生年月日:1987年1月3日

出身地:神奈川県

サクシードジム 代表

アマチュアキックボクシング大会『THE TEMPEST』代表

経歴:キックボクシングの名門、チームドラゴンで10代の頃より選手、トレーナーを務め、現在は神奈川県厚木市にサクシードジム代表を務めている。2024年9月よりアマチュアキックボクシング大会『THE TEMPEST』の代表を務める。

優勝すれば胸を張って日本一と言える大会にしたい

―9月8日に開催されるアマチュアキックボクシングの興行、THE TEMPESTの代表を渡部さんは務められておりますが、まずはどのような大会なのかご説明をお願いします。

渡部:この大会を開催するに至った理由としては、レスリングやボクシング、柔道等の他の格闘技と比べて数多くの団体が存在し、統一王者を決定することが難しいのが現状です。他の競技では年に1回ある全日本大会で優勝すれば胸を張って日本一と言えますが、キックボクシングにはないことが、キックボクシング界の課題だと常々思っていました。なので、うちのタイトルを持っていたら、胸を張って日本一と言えるようなタイトルを作ることを最終目標に掲げている大会にしたいと思っております。

―キックボクシングの日本一を決める大会との位置づけにするためには、何が大事になってくるとお考えでしょうか。

渡部:僕が考える日本一とは、何のタイトルを獲るか、どこの大会で勝つかではなく、誰に勝ったかが大事だと思っています。なので、うちの大会では、ベルトの価値は選手が作るのであって、とにかく選手ファーストを大事にしようと思っています。全国の選手が参加しやすく、みんなで協力して一つの大会を作っていこうというコンセプトで行おうと思っています。最終的には、世界一を決めることまで、自分たちの大会で全てまかなうことを目指しています。そのために、世界に挑戦したい人の橋渡しもできるようになりたいなと考えています。このようなことは自分の現役時代の後期あたりからずっと考えていて、このタイミングで動き出したのはきっかけがあったわけではなく、自分のキャリア含めてそろそろかなと思いました。

RDX JAPANはオフィシャルサプライヤーとして大会を盛り上げる

―そういった理念がTHE TEMPESTという大会名には込められているのでしょうか。

渡部: 乱立する嵐のようなキックボクシング界を象徴し、その中で光り輝く大会にしたいという意味を込めていますが、字面が8割ぐらいを占めてますかね(笑)

―字面は認知されるためにはとても大切ですからね(笑) THE TEMPESTを運営するにあたって、特に力を入れているポイントはありますか。

渡部:まずは選手ファーストであることです。ウォーミングアップのしやすさ、会場へのアクセスのしやすさ、申し込みのしやすさとか、全て含めて主催側ができることは何でもしています。現時点で※100人以上から参加申し込みをいただきましたが、強い選手が出るということをホームページやInstagramなどの各SNSに書いて、この人を倒したいなという形で広まってくれるのが僕の理想です。

※募集締め切り日までに合計200名以上の応募があった。

―大会を運営するにあたって、安全面の対策も大事になってくるかと思いますが、そのあたりはどのような準備をされていますか。

渡部:しっかりとリングドクターを入れて安全面を確保しています。また、長年レフリーをしているプロの方にレフリーは依頼し、公平性にも力を入れています。試合中の怪我に繋がるのはレフリーのストップが遅かったり、倒れた後の対応が遅いところから生まれるものが多いです。アマチュア大会は安全が第1なので、レフリー等の研修をしっかり行い、早めのストップを心がけていきます。

大会の構想は現役時代からあったと語る

THE TEMPESTのタイトルを取って色んな所に羽ばたいて欲しい

―安全面が担保されていれば選手も参加しやすいですよね。渡部さん自身の過去のこともお聞きしたいのですが、元々はキックボクサーの選手としてご活躍をされていたわけですが、この世界に入ったきっかけは何だったのでしょうか。

渡部:小学生ぐらいの時に、格闘ゲームで格闘技ってかっこいいと思って、そこから格闘技を始めました。その時の恩師がプロキックボクサーになると言っていたので、僕もプロキックボクサーになると決め、東京町田市にあるチームドラゴンというジムに所属しました。

―所属が決まってからキックボクサーとしてデビューするまでどのくらいかかりましたか。

渡部:僕は、元々テコンドーをしていて、学生大会で1位になったり、全日本大会に最年少で出て3位になったりしていて、そこからキックに行ったので多少はキックに関してはベースがありました。なので所属してからプロになったのは2年ぐらいですかね。

―キックボクサーとして活動をしている中で、どのタイミングで運営側に回って、ジムの運営、大会運営を行っていこうという考えになりましたか。

渡部:ある日突然意識が切り替わったわけではなくて、選手だけだと絶対いつか終わりはありますよね。その後、格闘技で生きていくためには指導者に回る必要があります。指導者だけで、周りの人全員を幸せにしていけるかと言うと、まだ足りない。そうなったら興行主になるしかないと考えました。なので、今回アマチュア大会をさせてもらっていますが、目標はプロ興行を作って、自分のタイトルを持って、RIZINやK-1、RISEやKNOCK OUTなどにどんどん選手を輩出していきたいというビジョンを持っています。チームドラゴンの代表で僕の師匠にあたる前田健作さんが元K-1のプロデューサーということもあり将来に向けてのビジョンの話も色々してくれていたので、思想を受け継いでいるのもあると思います。

アマチュア大会だけでなく、将来的にはプロ興行も視野に入れている

―トレーナーや経営者として活動されていく中で、選手の時と比べて格闘技への接し方や見方に変化はありますか。

渡部:選手でいる時は、外から見てなんでキックボクシング界は統一しないんだろうという思いがありました。しかし、今回大会運営をしてみて思ったのが、団体が分裂していても全く仲が悪いわけではなく、むしろ大会をしている人こそ、うちからも選手出しますよと真っ先に声をかけてくれるんです。そこでキックボクシング界は別にいびつでこういう形になっているわけではないんだと気付きました。だから無理やり一つにまとめるのではなくて、今の乱立している形のまま、いい形を探っていった方がいいのではないかなと、全体を見るようになって思いました。もし今後キックボクシング界の統一や、オリンピック競技への参入を目指すようなことになれば、協力できることがあればしたいとは思います。

ベルトの価値は選手が上げていくもの

―今回の大会の意義にも大きく関わってくることだとは思いますが、今後の格闘技界の若手育成をどのように考えていますか。

渡部:まずTHE TEMPESTのルールを決める時に、一番に考えたのがこの大会で育った選手がそのままプロ選手として活躍できる土俵を作ることだと思いました。プロとアマチュアでルールに変更を加えてしまうと、選手がプロに上がった時に大怪我をすることもあります。なので、なるべく技術的、ルール的に差がないようにアマチュア大会を運営し、うちの大会で育ってくれた選手がプロで現実的に活躍できるような場を作ることが必要だと思っています。

―プロで活躍する選手を育成していくためにルールの統一化は必要ですよね。選手が大会を通して成長するために、特に大切にしていることはありますか?

渡部:試合とは、元々は日々の自分の練習の成果確認のためにあるので、勝敗をつけることは、自分の練習に正解不正解をつけることだと思います。そこで明らかに勝敗を覆すような誤審があれば、その子から未来への道を奪うことになってしまうので、そういったことには気をつけています。今の子供たちはメンタル的にも、技術的にもプロ選手と同じように優れている部分があるので、負けも勝ちも糧にできるんです。なので、選手が納得のいかない勝敗結果を下すことを、主催者は必ず防がなくてはいけないと思います。原則として、勝とうが負けようが強い選手はそれをモチベーションに変えてくれますが、そこに水を差さないようにしっかりした公平な目でジャッジを下すことが大会の役割だと思います。

―納得できないままでは心身ともに切り替えが難しいですよね。まだ大会は始まってはいないので不透明な部分も多いかとは思いますが、現時点での問題点や克服すべき課題はありますか。

渡部:地方から参加してくれる人と、開催地域付近から参加してくれる人では、参加におけるハードルが違うので、そこの統一を図りたいです。具体的には宿泊施設、交通機関と連携したり参加に対してのハードルを下げることを目指します。本来、全日本大会とはそうあるべきだと思うので遠征してくる人に対してしっかりと対応してあげたいです。今後の開催場所は転々とする可能性もあり得ますし、とにかく全ての選手に平等にチャレンジの場を与えることが今後の目標であり課題だと思っています。

選手が平等にチャレンジできる場を作りたいと強く語る

―地方の方は大会に参加することから一つハードルがありますからね。やはり既存の大会の開催は関東がダントツで多いのでしょうか。

渡部:やはり関東が多いです。東京の大森にあるゴールドジムや新宿Faceなどアマチュア大会のメッカがありますので。ただ、結局出ている選手は毎回一緒なので、選手の代り映えがしない事が多くあります。選手は対戦したことのない相手と試合をしたいはずですよね。なので、今回のTHE TEMPESTの申し込み状況を見る中で、対戦経験のないマッチメイクが組めているので、それが楽しみです。各地から集まった選手と闘って勝ってこそ、日本一だと胸を張って名乗れるのではないかなと思います。

―改めてこの大会の目標を聞かせください。

渡部:選手が出て良かった、また出たいと思えるような大会を常に維持し続ける、向上し続けることです。そうすれば自然と選手たちも増えてきて、ベルトに価値も出てくるのではないかなと思います。自分のジムから始まり、アマチュア大会を行い、プロの興行も行い、大勢の人が見てくれることが僕の目標です。もちろん僕は指導者なので、自分が育てた選手がここまで来れたという成長も求めています。

―第1回大会の開催にあたり、出場選手たちに伝えたいことはありますか。

渡部:格闘技界で価値があるものは、タイトルやベルトではなく、まずは選手自身です。それを理解した選手が多ければキックボクシング、格闘技界は華やかになるし、そういった意識を持った人たちが集まる大会であれば、自ずとそのベルトに価値が出てくるので、自信を持って挑戦を続けてほしいです。

―今後この大会がどのように成長していくのかとても楽しみです!まずは第1回大会、無事に成功を収められることを祈っております!

THE TEMPEST

RDX Japan編集部
インタビュアー  上村隆介
カメラマン 森田好美

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