インタビュー | 2025.4.17 Thu
『“私にもできるかも”って思ってもらえる存在になりたい』
彼女は、弱冠16歳の総合格闘家 -知名 眞陽菜(ちな・まひな)選手。
アマチュア時代からRDX JAPANのアンバサダーを務め、2024年にはDEEP JEWELSでプロデビュー。
そこから2戦2勝という戦績を重ね、今や女子総合格闘技界の注目株だ。
闘う理由も、夢も、将来のことも──
『まだ全部は決まっていない』と語る彼女。
それでも、一歩ずつ着実に、リングの中心へと歩みを進めている。
初々しさと真剣さが交差するその素顔に、いま迫る。

知名 眞陽菜(ちな まひな)
生年月日:2008年8月12日
出身地:沖縄県宜野湾市
経歴:キックボクシングとブラジリアン柔術で培った実力を武器に、2024年、DEEP JEWELSでプロデビュー。現在は高校に通いながら、ミクロ級でのチャンピオンを目指し、日々鍛錬を重ねている。兄は総合格闘家の知名昴海。
初めて味わう、プロならではの空気感
ー2024年3月24日、DEEP JEWELS 44でのプロデビュー戦では、ちびさいKYOKA 選手と対戦しましたね。私も会場で観ていて印象深かったのですが、あれから1年経った今、あの試合をどう振り返りますか?
知名)デビュー戦ということもあり、めちゃくちゃ緊張しました(笑)でも、リングに上がったらスイッチが入って、練習してきたことを出せたと思います。勝ち負けよりも、『自分がどこまで通用するか』を確認したかったので、実際に戦ってみて『まだまだだな』って感じたこともあったし、でも『もっと頑張ろう』と思える試合でした。
ーアマチュアとプロの違いはどう感じましたか?
知名)すごく違いを感じました。アマチュアでは、相手も自分と同じくらいの経験の人が多いけど、プロは全体的に落ち着いていて、動きが冷静というか…。
あと、雰囲気もまったく違いました。照明とか音とか、試合の空気感がプロだと一気に変わるので、それに飲まれそうになる感じがありました。
ー2024年9月8日には、山崎桃子 選手とプロ2戦目を戦いました。デビュー戦の経験は、この試合に活きたと感じましたか?
知名)デビュー戦で、プロの舞台の雰囲気もわかって緊張しないかと思いましたが、入場する直前まで緊張で押しつぶされそうでした。涙が出てきてそれでも父や兄に試合のためにたくさん追い込んで練習してきたから大丈夫だと、励ましてもらい試合に挑むことができました。試合が開始してからは、相手は首相撲も強く打撃も勢いがあるので、それを意識して対応できたと思います。でも、練習でやってきたことを出せなかった部分もあって、そこは悔しかったです。

ーそして次戦、2025年5月25日(日)の『DAYS Presents DEEP JEWELS 49』(ニューピアホール)でプロ3戦目を迎えます。この試合に向けて、トレーニングやメンタルの面で意識していることはありますか?
知名)いまは特に寝技を重点的に練習しています。前回の反省点もあるし、自分の苦手なところから逃げずに向き合っていきたいです。打撃でももっと“自分のスタイル”を出していきたい。ただ勝ちたいだけじゃなくて、『前より成長している自分』を見せたいなって思っています。
女の子だって、格闘技を通じて強くなれる
ーもともと子どもの頃から柔術を練習されていましたが、柔術とMMA、それぞれを実際に経験してみて、どのような違いを感じていますか?
知名)柔術は試合中に打撃がない分、冷静に考えながら動けるのが面白いです。相手の力を利用してコントロールしたり、細かい駆け引きが多くて、じっくり考えながら試合を進められる感じがあります。
それに比べてMMAは、打撃もあるので一瞬の判断力とか、スピード感が全然違って…。気を抜いたらすぐ終わるっていう緊張感があって、集中力を切らさないことがすごく大事だなって思います。どっちも好きなんですけど、柔術で身についた動きをMMAでも活かせるようにしたいなと思ってます。
ー現在はプロのMMAファイターとしてご活躍されていますが、MMAに転向することになったきっかけは何だったのでしょうか?
知名)キックボクシングはしていたので今後続けていく中で、グラップリングとか、総合に挑戦したいと思うようになって。最初は全然動けなかったけど、ひとつずつ『できること』が増えていくのがすごく楽しいです。
ー16歳という若さで学校生活と両立していると思いますが、やはり大変なことはありますか?
知名)大変です(笑)通信制なので毎日の学校とかはないですが、1週間のスクーリングと1年間の教材がまとめて自宅に届くので、試合のないオフの時期に提出するレポートを練習に影響がないように計画的にまとめて終わらせるように取り組んでいます。一気に終わらせてしまわないと、試合もあるし追い込み練習もあるので、やる時間がなくなるので。でも、終わってしまえば、その分毎日練習ができるので、試合に向けて集中できますし、自然と生活も整います。
ー“女子高生ファイター”として、同世代の若い人たちに伝えたいメッセージはありますか?
知名)学校ではあまり自分から格闘技のこと、あんまり話してないんです(笑)。でも周りからは女子で格闘技やってるってすごいねって言われます。私のなかでは、幼い頃からの延長って感じなのですごいとか実感はないですが、『続けて努力したら夢に近づける』ということをもっと伝えていきたいです。強い女性ってかっこいいし、私の試合とか見てやってみたいと思ってもらえたら嬉しいです。

“私にもできるかも”って思ってもらえる存在になりたい
ー 格闘家としての練習や試合準備の中で、身体的にも精神的にもつらかった経験はありますか?その時、どのように気持ちを切り替えたり、乗り越えたりしたのでしょうか?
知名)うまくいかなくて、自信がなくなることはよくあります。でも『ちょっと休んでもいいよ』って自分に言うようにしてます。頑張りすぎなくてもいいし、逃げてもいい。戻ってこられたらそれでいいって思ってます。
ー前回のインタビューで、『愛犬と過ごす時間が癒しです』と話してくれましたよね。今も変わらず、ワンちゃんとの時間を大切にしていますか?
知名)犬と過ごす時間がいちばん癒されます(笑)家に帰って、犬と遊んだり、ただ一緒にゴロゴロしてるだけでもすごく落ち着くんです。なんか、何も言わなくてもそばにいてくれるだけで安心するというか…。疲れてるときでも『また頑張ろう』って思えるので、すごく大切な存在ですね。
ーオンとオフの切り替えを意識することは、とても大切ですよね。そんな中で、今後の目標や夢についてもぜひ聞かせてください。
知名)もっと強くなって、プロの舞台で活躍したいです。でもそれだけじゃなくて、誰かの背中を押せるような存在になれたらいいなって。私が格闘技に憧れたみたいに、今度は誰かに『やってみたい』って思ってもらえるような存在になれたら嬉しいです。
ー最後の質問です。知名 選手が考える“プロフェッショナル”とは、どういったものですか?
知名)自分のことだけじゃなくて、周りの人のことも考えられる人、だと思います。試合で結果を出すのはもちろん大事だけど、それだけじゃなくて、見ている人に影響を与えたり、応援される存在っていうのが“プロ”なのかなって思います。
私も『信頼される選手』になりたいし、試合を通じて誰かの心に残るようなファイターになりたいです。
ー本日はありがとうございました!プロ3戦目も期待しております!

編集後記:アマチュア時代にインタビューをしたのは、約1年半前。この世代の1年半は、とても大きな成長の時間だと改めて感じました。多感な時期であり、悩みも多い年頃。プロとして活躍している彼女も、まだ16歳の女の子です。もちろん、本人はチャンピオンを目指して日々努力を重ねていますが、あまりプレッシャーをかけすぎず、総合格闘技というスポーツを心から楽しんでほしい──そんな思いが込み上げてきました。楽しんだその先に、自然とベルトが見えてくるような未来があれば素敵だなと、大人として願わずにはいられないインタビューでした。
(RDX Japan編集部)インタビュアー 上村隆介