インタビュー | 2026.6.4 Thu
「次の試合は2ラウンド目からの続きです」
100か0かで生きる男が、ベルトを掴みにいく。
2026年6月21日(日)、SB日本スーパーウェルター級タイトルマッチ。
王者・都木航佑に挑むのは、同級1位の風間大輝だ。
2024年10月、後に王者となる都木との一戦は、負傷による1ラウンドTKO負け。
不完全燃焼のまま終わった試合は、風間にとって今なお終わっていない。
サウスポーへの転向、オープンフィンガーグローブ戦への挑戦、そして「過程なき結果に意味はない」という信念。
タイトルマッチを目前に控えた風間に、格闘技へ懸ける想いを訊いた。

風間 大輝(かざま だいき)
生年月日:1997年10月14日
出身地:茨城県
所属:橋本道場
経歴:中学時代に柔道で非凡な身体資質を示し、20歳の時にK-1観戦を機に格闘技の道へ。アマチュア約13戦を経てプロデビュー。2024年10月の不完全燃焼な敗戦後、サウスポーへの転向と「負けたら引退」の覚悟で覚醒し、現在5連勝中。フルタイム勤務をこなしながら、SB日本スーパーウェルター級1位まで登り詰めた。
「2ラウンド目からの続き」
不完全燃焼の結末を超えて
ー6月21日(日)後楽園ホールでの「SB日本スーパーウェルター級タイトルマッチ」が目前に迫っています。現在のコンディションや仕上がりはいかがですか?
風間)絶好調ですね!すごく良い状態で毎日を過ごせています。試合が楽しみでしょうがないです。
ー先日は大阪の方へ長めの練習会(合宿)に行かれていたそうですね。どのような調整をされてきたのでしょうか。
風間)約1週間、大阪の練習会に参加させてもらいました。今回の調整で意識したのは、とにかくスパーリングの「量」と「質」を圧倒的に増やすこと。僕より体格が大きい選手や、同じくらいの階級の選手と、これまでにないくらい実戦に近い形で拳を交えてきました。技術的な細部をこねくり回すというよりは、対人対応の量と質を引き上げることに集中しましたね。
ー体格差のある相手とのスパーリングを重ねたことで、どのような手応えを得られましたか?
風間)実戦の再現性と、強いプレッシャーをかけられた時の耐性が一気に上がりました。次戦の局面を想定しながら、相手の圧力に対してどうレンジ(距離)を調整するか、当たり負けしない身体感覚を徹底的に磨くことができた。序盤からしっかりと自分が主導権を取りに行くための、明確な意識づけができた合宿になりましたね。

ー今回のタイトルマッチは、2024年10月の都木選手との一戦からのストーリーが繋がっているように感じます。あの試合は負傷によって1ラウンドで決着がついてしまい、悔しい結末となりました。風間選手にとってあの試合はどんな位置づけですか?
風間)実は、対戦相手の個人に対する執着や「リベンジしたい」という強い感情は、そこまでないんです。ただ、僕の中で物事をやるときはいつも終わりを決めていて。プロデビューした時に「3年以内にベルトを取る」と自分に期限を課していたんです。あの2024年10月の試合が、ちょうどその3年目の最後の試合でした。
ー特別な意味を持つ、ご自身の中のタイムリミットの試合だったのですね。
風間)そうです。それなのに、怪我のせいで完全燃焼すらできないまま、1ラウンドだけで終わってしまった。それがどうしても心残りでした。だから、彼がチャンピオンになった状態でこうしてタイトルマッチができるのは、僕としては「あの時の2ラウンド目からの続き」が始まるという感覚なんです。あの時の続きをやって、しっかり完全燃焼して決着をつける。それだけですね。

1回でも負けたら辞めるという覚悟
ー2025年は4戦全勝、今年も2月の試合を制して現在5連勝中です。この勢いを生んだ要因、ご自身の中での変化は何だったのでしょうか。
風間)大きく変わった技術的な部分は、サウスポーに転向したことです。構えを変えたことで、軸足の位置や打撃の角度、相手との読み合いにおいて優位性がすごく増しました。自分の勝ち筋が明確に安定するようになったのは、勝率が上がった大きな理由の一つです。
ーなるほど、技術的な大転換があったのですね。メンタル面での変化はいかがですか?
風間)メンタルが一番大きいですね。さっきの「3年」という期限もそうですけど、あの悔しい敗戦以降は「1回でも負けたら格闘技を辞める」と心に決めてリングに上がっています。だから、毎試合の入り込み方、集中力がこれまでとは比にならないくらい強い。正直、どの試合もギリギリの戦いではありましたけど、最後の最後で「僕の方が相手より勝ちたかった」。その覚悟の差が連勝に繋がっているんだと自己評価しています。
ー昨年はオープンフィンガーグローブ(以下、OFG)での過酷な試合もありました。両目の眼窩底を骨折するほどの激闘の末に勝利を収められましたが、ダメージを抱えてのトレーニングや回復は大変だったのではないですか?
風間)いや、怪我をした後も数日休んだらもうランニングとかは再開していました(笑) 確かに殴られた顔は痛いですけど、僕はあんまり後を引かないタイプというか。自分なりの回復のルーティンが確立されているので、そこまで大変さは感じなかったです。
ーOFGはダメージが大きいですが恐怖心などはないんですか?
風間)むしろ、僕はOFGの試合がすごく好きなんです。今回のタイトルマッチも、本当はOFGでやりたかったくらいですから(笑)
ーそれはなぜですか?
風間)グローブが薄い分、より「戦い感」が強くなるんですよね。気持ちがめちゃくちゃ入りやすくなる。それに、OFGだと相手が攻撃をもらった時にすぐ怯みやすいんです。僕は自分の方が相手よりも絶対に根性があると思っているので、被弾した時の反応の差が出る。ダウンも取りやすいですし、根性勝負になれば自分が絶対に勝てるという自信があります。
ー激しい打ち合いの試合は、観ている側も興奮してきますよね。ご自身の中で「見せたい試合観」のようなものはありますか?
風間)格闘技を観ていて、お互いが意地を張り合って打ち合う名勝負ってあるじゃないですか。僕もそういう風に、観客の心を動かす試合をしたいと思っています。ただ勝つだけ、負けるだけのビジネスライクな試合じゃなくて、熱量がしっかり伝わる戦いをしたい。
ー具体的にその熱量を伝えるためにどのような戦いを求めていますか。
風間)試合の内容そのものは、相手の出方にも左右されるのでコントロールしきれない部分があります。でも、自分がどれだけの熱量を持ってリングに上がるかは、100%自分自身で統制できる領域です。だからこそ、「僕の背中自体を見てほしい」と思います。どれだけの努力をして、どんな覚悟を背負ってあのリングに立っているのか。戦う姿勢を通じて、観ている人が何かを感じ取ってくれたら、格闘家としてそれ以上の喜びはないですね。

喧嘩が強くなりたくて始めた格闘技
ーここで少し、風間選手のルーツについて教えてください。もともと格闘技を始めたきっかけはK-1を観戦したのがきっかけだったそうですね。
風間)はい。友達に誘われて、K-1のアンダー65kgの日本トーナメントを観に行ったんです。その時のトーナメントの熱量と試合の内容が凄すぎて、一気に刺激を受けて「自分もやりたい」と思ったのがすべての始まりでした。ただ、最初は本当にくだらなくて、「喧嘩に強くなりたい」っていう不純な動機だったんですけど(笑) プロとして本気で上を目指そうと意識が変わったのは、今の橋本道場に来てからです。
ーそれ以前は、学生時代に野球をされていたんですよね。
風間)小学校から野球をやっていました。怪我が多くて肘を痛めたりもしたので、最終的なポジションは一塁手(ファースト)でしたね。守備や走塁よりは、バッティングメインの選手でした。

ー中学時代には柔道も経験されたそうですね。
風間)中学校の部活が終わった後の半年間だけ、顧問の先生に勧められて柔道部に入ったんです。最初は勝てないしトレーニングもきつくて全然楽しくなかったんですけど、3〜4ヶ月経った頃から急に自分の体が競技に追いついてきて、感覚が変わりました。
ー柔道家としても素質があったんですね。当時から体も大きかったですか?
風間)中3の時にはもう177〜178cmくらいあって、卒業する頃には182cmありました。体ができてからは急成長して、同じ階級の地区大会上位の選手を普通にぶん投げられるようになって。周りの先生からは「中学1年から真面目にやっていれば、全中(全国中学校柔道大会)を確実に狙えたのに」と言われていました。自分でも、あながち夢じゃなかったなと思えるくらいには、資質を発揮できていた気がします。
リングに上がれればルールは何でもいい
ーその後、20歳のタイミングで再び格闘技の道へ進むわけですが、アマチュア時代からプロを見据えていたのでしょうか。
風間)高校時代は全く運動せずに遊んでいたんですけど、社会人になって「やっぱり格闘技をやりたい」と思ってジムを探しました。アマチュアでは13試合くらい経験したんですけど、最初から「プロでデビューする前提」でキャリアを積んでいたので、一戦一戦の意識が違いましたね。思いのほか勝つことができて、プロデビュー戦が決まった時は恐怖なんて全くなくて、「やっとデビューできる、楽しみでしかない。早く来い!」という気持ちだけでした。
ーメンタリティがその頃からプロだったんですね。実際にプロになってみて、アマチュアとの違いはどこに感じましたか?
風間)技術的な差というよりも、対戦相手の気持ちの強さですね。アマチュアだと趣味の延長線上の人もいますけど、プロは全員が人生を賭けてガチガチの本気で臨んでくる。その精神的な緊張感はプロならではだと思います。
ただ、僕自身はルールに対するこだわりが本当に薄くて。シュートボクシングだろうがキックだろうが、究極、1つの戦いに勝手にルールが決められているだけだと思っているんです。リングに上がれるなら何でもいい、どんな条件でも戦うというスタンスです。

ープロを志して門を叩いた「橋本道場」ですが、所属してみて環境はいかがですか?
風間)先輩も同輩も、所属している選手がみんな何かしらのチャンピオンだったり、輝かしい実績(チャンピオンベルト)を持っています。だから、意識のレベルがとにかく高い。僕が1勝、2勝したくらいじゃ、ジムの中では「まあ、普通だよね」という空気なんです。誰も過剰に褒めてくれない(笑)
ーチャンピオンになって当たり前、という基準が最初からあるのですね。
風間)そうです。ベルトを獲って初めて、みんなと同じスタートラインに立てる。その基準が自分の中にも自然と植え付けられました。だから今まで、自分の結果に満足したことは一度もありません。
自分に「自信」はありますけど、決して「自惚れ」はしない。結果を出して初めて周りに評価されるべきだという厳格な価値観は、この環境にいるからこそ保てているんだと思います。
ー格闘家としてのシビアな一面として、計量後のリカバリーについてもマイルーティンがあるそうですね。
風間)計量が終わった直後は、固形物は絶対に食べません。まずは水分を2〜3リットルじっくり飲んで、乾いた体に慣れさせます。そのあと、3時間くらい空けてからようやく消化の良い炭水化物を入れ始めます。最終的に何キロ戻すかをあらかじめ逆算して食事を設計しているんです。いつも通りのルーティンを守れば、戻る体重の量も毎回一定になります。
RDXのギアは特にレガースがお気に入り
ー現在、RDXのアンバサダーを務められていますが、用具の使い心地はいかがでしょうか。
風間)これまでいろんなメーカーのギアを使ってきましたけど、RDXの製品はめちゃくちゃ使いやすくて、体への“しっくり感”が凄いです。グローブもミットもフィット感と耐久性が高くて大満足しています。
ーその中でも、特に風間選手が気に入っている「推しアイテム」を教えてください。
風間)一番は圧倒的にレガース(シンガード)ですね。
ーレガースですか! どのあたりに良さを感じますか?
風間)多くのメーカーのレガースって、使い込んで足に馴染んでくると、革が柔らかくなる代わりに中のクッション性がヘタって薄くなっちゃうんです。そうすると保護性能が落ちてスパーリングで痛い思いをする。
でも、RDXのレガースは、しっかりとした強度や耐久性を保ったまま、絶妙に柔らかくなって足に馴染んでくれるんです。使いやすくなっても「しっかり守られている感」がずっと持続する。これは本当にすごいクオリティだと思います。

100か0かで生きるライフスタイル
ー風間選手は現在、フルタイムで働きながらプロ格闘家として練習に励まれているんですよね。非常にハードな毎日だと思いますが、タイムマネジメントはどうされているのですか?
風間)本当に、自分の自由時間は自分で無理やり作るしかない状態です。仕事が終わってからジムに直行して夜まで練習。家に帰って諸々を済ませて、どれだけ頑張っても寝られるのは深夜1時くらいです。朝は6時起床なので、平均して毎日5時間睡眠くらいですね。
ー本当、格闘家の方々は忙しい毎日を過ごしていますよね。最初から順応できたのでしょうか。
風間)いや、最初は本当にきつくて寝坊しちゃうこともよくありましたよ(笑) でも、今は完全にそれがルーティンとして身体に定着したので大丈夫です。日々この生活を送ることで、逆に基礎体力がつきましたし、起きる習慣自体が身体化されました。
ーそんなお忙しい中、オフの日はどのように気分転換をされているのですか?
風間)固定の趣味っていうのは特にないんですけど、基本は買い物に行ったり、美味しいご飯を食べに出かけたりするアウトドア派です。地元の茨城から離れて、名古屋や京都、大阪あたりにはよくプチ旅行感覚で出かけます。そこでご当地グルメを食べるのが一番のリフレッシュですね。
昔は「デカ盛りチャレンジ」とか、3キロのチャーハンに挑戦したりもしていました。完食はできなかったんですけど(笑)「自分にできないかもしれないことに挑む」っていう感覚が好きなんですよね。

ーご自身の性格をひと言で表すと、どんな人間だと思いますか?
風間)周りの人からもめちゃくちゃ言われるんですけど、「ちょうどよく生きられない人間」です。要するに「100%か0%か」の極端なタイプ。自分が興味を持った対象には寝食を忘れるくらい100%没入しますけど、興味が薄れた瞬間に0%になってどうでもよくなる。100か0かの男です(笑)
ー今の風間選手にとって、100%を注ぐ対象がまさに格闘技なんですね。
風間)そうですね。ただ、僕は格闘技という狭い世界だけで生きているつもりはなくて、もっと大きな「自分の人生を豊かにするためのモノ」として格闘技を捉えています。
ー「人生を豊かにするためのモノ」について、もう少し詳しく聞かせてください。
風間)格闘技の世界って、極端な話を言えば、試合前に1分も練習していなくても、当日勝てばチャンピオンとして一番偉くなれちゃう世界じゃないですか。でも、僕の人生観として、何のプロセスも踏まずに得た栄光や結果には、全く意味がないと思っているんです。
ー結果至上主義のプロの世界において、あえて「過程(プロセス)」を重視すると。
風間)はい。試合当日までに自分がどれだけのものを犠牲にして、どれだけ深くその戦いに没入し、覚悟を持って挑めたか。その濃密なプロセスがあって初めて、勝った時の喜びや、負けた時の悔しさから、人生の糧になる「意味」が生まれると思うんです。
だから勝つにしても負けるにしても、その原因をすべて自分の行いに紐づけたい。「意味のないことはしたくない」という哲学が根本にあります。
ーその強い哲学を持って挑む今回のタイトルマッチ。改めて、ベルト獲得への意気込みをお願いします。
風間)自分がこの階級で「一番強い」ということを証明するために、ベルトはどうしても必要なものです。対戦相手よりも僕の方が強いという事実を試合で残酷に証明して、ベルトを獲ります。その先でやらなきゃいけないこと、見たい景色がたくさんあるので、次へ進むための正当な権利として、あのベルトを確実に掴み取ります。
ー最後に、風間選手にとって「格闘技」とは何でしょうか。
風間)一言では言い表せないですね。なくてはならないものですし、年齢的にも僕にとっての「青春」そのものです。そして「夢」であり、「日課」であり、生活のすべて。長くこの青春を続けるために、僕は結果を出し続けなきゃいけない。完全に自分のライフスタイルと同化した、人生そのものです。
ーありがとうございます。ベルト獲得を期待しています!
編集後記:まさに背水の陣で駆け抜けた去年から、風間選手の顔つきが一段と凛々しくなった気がします。今回のインタビューを通じ、彼が語る「プロセスを大事にする人生観」こそが、そのまま今の強さに繋がっているのだと強く感じさせられました。私自身も、結果を導き出すまでの「過程」をより一層大切にしていきたいと思わされる時間でした。(RDX Japan 編集部)
インタビュアー 上村隆介


