GLORY BEYOND DREAMS 杉本 崇馬 インタビュー

インタビュー | 2026.3.26 Thu

ラグビー界において、今もっとも「画面越し」にファンとの距離を縮めている男がいる。

コベルコ神戸スティーラーズに所属する杉本崇馬、25歳。
自身のSNSアカウント「ソマライフ」で見せるユーモア溢れる動画は、チームメイトを巻き込み、ラグビーを知らない層からも熱い視線を集めている。

しかし、SNSで見せる笑顔とは裏腹に、自身が経験したメンタルの不調、そして家族の病という深い葛藤があった。

「なぜ、現役選手がここまで発信するのか」

その真意を探ると、一人のアスリートとしての覚悟と、ラグビーへの深い愛情が見えてきた。

杉本 崇馬 (すぎもと そうま)

生年月日:2000年10月2日
身長:181 cm
出身地: 東京都世田谷区

経歴:野球からラグビーへ転向し、その魅力に惹かれてラグビーに没頭。中央大学3年時にプロを志し、現在はコベルコ神戸スティーラーズに所属。SNSでも発信を続け、競技の枠を超えた影響力を持つアスリート。

発信の原点は自身の歩んだ軌跡にあり

ー杉本選手といえば、今やSNSでの発信がトレードマークになっています。まずは、現役選手として積極的に動画配信を始めたきっかけから教えてください。

杉本) 実はSNSではまだ詳しく話していないことなのですが、きっかけは自分自身の経験にあります。過去に僕自身が精神的な病を経験したこと、そして父が急病で倒れたことが重なった時期がありました。それまでは「健康で当たり前」だと思っていた自分ですら、そうなってしまった。その時に、健康や心のあり方の重要性を痛感したんです。

世の中には同じような境遇で苦しんでいる人がたくさんいるはず。いつか、自分の経験を活かしてメンタルコーチングのような活動をしたいと考えるようにもなりました。そのためにまずは認知度を高め、影響力を持つ必要があると考えました。それがSNSに本腰を入れた一番の理由です。

ーSNS投稿からは深いバックグラウンドがあるとは全く想像できませんでした。投稿される動画はどれもコンセプトを決めて投稿されていますが、いつもどのように動画内容は決められているのですか?

杉本) まず軸にあるのは「ラグビー選手であること」です。世の中に情報発信をしている人はたくさんいますが、ラグビー選手が、日常の「あるある」やエンタメを発信することに価値があると思っています。

企画自体は、TikTokなどで流行っているものや、異業種のコンテンツを「もしラグビー選手がやったら?」という視点で自分なりに変換しています。スポーツという枠にとらわれず、いかに「自分にしか出せない味」にするかを常に考えていますね。

ーチームメイトも頻繁に登場されていますが、周囲の反応はいかがですか?

杉本) 最初は「何やってんだよ」って、いじられました(笑) でも、今はみんなすごく協力してくれます。動画に一緒に出てもらって、チームの和気あいあいとした雰囲気が伝わるのはすごく嬉しいですね。ファンの方からも「勇気をもらえる」といったコメントをいただきますし、何より嬉しいのは「杉本選手のSNSを見てファンクラブに入った」「初めて試合を見に行った」という声をいただいた時でした。

ー広報活動としても大きな役割を果たしていますね。

杉本) まだまだこれからです(笑) でも、ラグビーってルールが難しいイメージがあって、観戦のハードルが少し高いじゃないですか。だからこそ、まずは「ソマライフ」が入りやすい窓口になればいい。僕を知ってもらって、そこからラグビーの面白さに気づいてもらう「0から1」を作る作業を、僕が担いたいと思っています。

ーラグビーに触れたことのない人にとって、ラグビーを知るきっかけになってくれたら嬉しいですよね。発信を続けることで、競技へのモチベーションに変化はありましたか?

杉本) 逆に自分の首を絞めている部分もあります(笑) 自分の意思や想いをSNSで公言している以上、グラウンドで不甲斐ない姿は見せられない。批判を力に変えるというか、もう「頑張るしかない」という強いプレッシャーが、今の僕の大きな原動力になっています。

試合に出られない今
誰よりも走る姿で示す

ーチームに加入して3年目になりますが、現在の立ち位置をどう捉えていますか?

杉本) まだ試合に出られていないという厳しい現実に直面しています。3年目とはいえ、自分はまだ新人と同じような立場。がむしゃらにやるしかない状況です。ただ、この環境にいられること自体は本当にありがたい。世界トップクラスの選手がすぐ隣にいて、彼らのラグビーに対する向き合い方を肌で感じられるわけですから。

ーチームに加入してチームメイトのラグビーIQの高さに驚いたと過去に発言されてましたが具体的にどのような部分にIQの高さを感じましたか?

杉本) 一つのプレーに対するフィードバックでも、単に「良かった」「悪かった」ではなく、「なぜそうなったのか」という原因を徹底的に深掘りする。その分析力の高さには、入団当初から圧倒されました。

ーその差を埋めるために、普段の練習から意識していることはなんでしょうか?

杉本) まずは「わからないことは、わかる選手に聞く」ことを徹底してます。プライドを捨てて、積極的に質問するようにしています。あとは、上手い選手のプレーを徹底的に観察すること。試合後には個人のスタッツ(統計データ)が詳細に出るので、自分の足りない部分は数値として残酷なほど明確に現れます。そこから逃げずに、自分をアップデートし続ける毎日です。

練習でアピールし、初出場を目指す

ーご自身が「これならトップでも通用する」と自信を持っている武器は何でしょうか。

杉本) 「体力」ですね。走力は数値的にも、チーム内でトップクラスのスタッツを出せています。誰よりもグラウンドを走り回れる自信はある。その持ち味をいかに「得点に絡む動き」に結びつけられるか。それが今の僕の課題であり、最大のチャンスだと思っています。

ー具体的に、試合に出るために必要だと感じている要素はなんでしょうか?

杉本) ウイングというポジションである以上、やはりスピードは不可欠です。ただ、足の速さといった天性の部分だけでなく、戦術理解や試合を読む力を高めることで、自分の強みを最大限に活かせるようになりたい。そこが伴って初めて、公式戦のピッチが見えてくると確信しています。

ラグビーを知らない人の窓口になりたい

ー元々は野球少年だったということですが、野球からラグビーへ完全にシフトしたきっかけは何だったのでしょう?

杉本) 兄と父がラグビーをやっていた影響も大きいですが、決定打は中学3年生の夏、クラブチームの野球を引退してラグビーを本格的に始めたときに、ラグビーの楽しさを感じたことですね。野球も素晴らしいスポーツですが、ラグビー特有の激しいぶつかり合いと連帯感に、心底惚れ込んでしまったんです。

野球少年時代のお写真(本人提供)
中央大学ラグビー部時代のお写真(本人提供)

ー大学3年生で神戸スティーラーズの練習に参加した際、プロを意識したと伺いました。

杉本) はい。神戸の練習に参加させてもらった時、「この高いレベルで絶対にプレーしたい」と強く思いました。当時は自分の思い切りの良いランプレーを評価してもらったと感じていますが、あの時の「一流になりたい」という初期衝動は、今も消えていません。

ー今後、公式戦のピッチに立った時、どんな姿を見せたいですか。

杉本) まずは公式戦のピッチに立つことが目標ですがそこで「ずっと出られなくても、頑張れば出れるんだよ」という勇気を与えられるようなプレーを見せたい。将来的には、常に最大限のプレーを継続して、チームから信頼される選手になりたいです。そしてチームの一員として絶対に日本一を獲りたい。

ーSNSの活動は今後どう広げていきたいですか?

杉本) これからは、自分の経験に基づいたメンタルヘルスの発信も少しずつ増やしていきたいです。あとは、ラグビー以外の分野の人ともコラボして、もっと認知を広げたい。ラグビーを知らない人にとっての「入りやすい窓口」になれたらいいなと思っています。

ー最後に、杉本選手にとって「ラグビー」とはどのような存在ですか?

杉本) 一度は野球を諦めた自分に、「スポーツで一流になりたい」という新たな目標を与えてくれた存在。そして、今の僕のすべてを形作っている「人生の一部」です。まだ日本一という景色を見たことがないので、このチームで必ずその頂に立ちたい。

ーラグビー選手としてグラウンドで活躍する姿を期待しております!

編集後記:SNSを見ていた時にたまたま目に入ったのが杉本選手。ラグビー選手でもこういった発信をしている方がいるんだと思い、気づいた時にはDMを送っていました。アスリートとして葛藤がある時期でも、常に前向きな姿勢で発信し続ける姿にはプロ意識を感じます。まずは初出場してチームに貢献するプレーを楽しみにしています。(RDX Japan編集部)

インタビュアー  上村隆介

杉本 崇馬

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