BRIDGE OF DREAMS 車椅子ボクシング

RDX JAPANがサプライヤーを務める長崎県佐世保市のボクシングジム『ウルフパック・ハウス・ボクシングジム』。
今年2月には、佐世保市内で開催された世界ボクシング評議会(WBC)によるイベントには元世界王者の亀田興毅さんも参加、日本で初めての車椅子ボクシングのスパーリングが行われた。

“佐世保市から世界へ”

懸命にボクシングに情熱を注ぐ前田秀樹選手、そして団体代表の森さんとトレーナーの北岡さんに車椅子ボクシングの現状、そしてこれからの車椅子ボクシングの未来をお伺いしました。

北岡 敏治

(写真左)

生年月日 1961年1月14日

出身地  長崎県西海市

経歴
2010年よりウルパックハウスのトレナーとなり現在車椅子ボクシング指導担当

森 進至

(写真中央)

生年月日 1970年6月14日

出身地  長崎県佐世保市

経歴
2006年に佐世保市でアマチュアのボクシングジム設立。

前田 秀喜

(写真右)

生年月日 1963年12月28日

出身地  佐賀県

経歴
2010年よりジムに入会し4年前に事故で車椅子生活となり2021年にジムに復活し車椅子ボクシング普及活動をしています。

―自己紹介をお願いします。

前田)前田秀樹(まえだ ひでき)と言います。佐賀出身、現在59歳です。2011年の9月からウルフパック・ハウス・ボクシングジムにお世話になっています。昨年から車いすボクシングを始めました。実は今から4年前に交通事故に遭い車いす生活になっています。

―ボクシングを始めた切欠は何だったんでしょうか?

実は今から10年前より健康の為と思いボクシングを始めたのです。もともとボクシングが好きでした。

週に2回通い、楽しい日々を送っていました。4年前、事故に遭ってからは絶望の日々でしたが、このままではいかん。もともと体を動かすのが好きだったので、じっとしていられず、ブランクはありましたが「車いすでもボクシングできますか?」と、このジムの門をたたいたんです。

車いすでもボクシングができる

―それを聞いてジムとしてはいかがでしたか?

森)私たちは2006年に設立し、これまでにアマチュアの選手を世に輩出してきたジムです。昨年ごろから、実は、世界ボクシング評議会(WBC)の社会貢献団体WBCケアーズと話をしていたころで、その時「車いすボクシングを普及できないか」という話題があがったのです。偶然にも一週間前に前田さんが復帰されたタイミング。前田さんも社会貢献が出来るならお手伝いしますと了承をいただき、今年の2月13日に日本で初めての車椅子ボクシングのスパーリングが佐世保で行われたのです。

―それは素晴らしいですね。今後もこの活動も続くのでしょうか?

森)その通りです。実行委員会の方々と交流があったため佐世保で開催されたことも大きいですね。6月11日に埼玉県の草加市でもWBCケアーズがあり、私たちも招待されております。トレーナーの北岡と前田さんと一緒にスパーリングを行ってくる予定です。全国各地でWBCケアーズの活動は続いているので、車いすボクシングの体験機会もこれからも増えていくだろうと予想しております。

―色々とタイミングが重なったのですね。この状況に関してトレーナーの北岡さんはどう受けていますか?

北岡)非常に素晴らしい取り組みだと感じています。ただまだボクシング専用の車いすは開発されていません。専用のリングも少ないです。6月に開始される草加のリングは車いすの方でも利用できるのですが、その草加の1拠点のみ。昨年、日本パラボクシング連盟が立ち上がったばかり。ルール策定などもこれからです。

―手ごたえ的にいかがですか?

森)非常に良いですね。WBCケアーズの時はInstagramやSNSを活用し、車いすボクシングの動画をアップしたところ、直接DMが届いたり、いいねも増えたりと、想像以上の反響がありました。「車いすでもボクシングが出来るならばやってみたい」。そういった声が聞けて、これはいけるのではと確信しています。長崎だけではなく、大阪の方からも連絡を頂いたりと。前田さんと同様、以前ボクシングをやっていた方、これを機会にボクシングを始めたい方など、沢山お問い合わせをいただきました。

新しいパラスポーツとしても
車いすボクシングが注目されてくる

―車いすの方がスポーツを始めるならばボクシングが良いと

森)車いすの方で格闘技をやってみたい方は、ボクシングしか選択肢が無いと思っています。YouTubeを見るとヨーロッパでも車いすボクシングが盛んなようです。これからの新しいパラスポーツとしても車いすボクシングが注目されてくると思います。

―2月に開催されたWBCケアーズのイベントが佐世保で開かれました。選手として参加する前田さんにとってどんな気持ちでしたか?

前田)非常にやりたいと思いましたね。またボクシングが出来るなんて思ってもいなかったので、こういった形で参加できることはとても嬉しかったです。胸から下はいうことが効かない。けれど、上体だけならボクシングがまた出来る。ボクシングをしていると正直嫌なことも忘れられるんです。ボクシングに救われたと思っています。

―前田さんはどうしてボクシングをもう一回やろうと思ったのでしょうか?

前田)入院中に先生にミットを持ってもらいミット打ちをしてもらっていたんです。どうしてもやりたくて、自分から電話したんです。タイミングも重なり、連絡して本当に良かったと思います。

KARAシリーズ ボクシンググローブ F6

―今課題と感じているのは何でしょうか?

前田)やはり、車いすでしょうね。通常の車いすではお互い干渉してしまいパンチが当たらなくなる。接近戦になると相手の懐に入りこむインアウトの動きはできない。車いすの改良が今後の課題だと思っています。本当は中に入りこんで戦いたいのですが(笑)

―リングと車いすの問題が解決されたら利用者も伸びそうですね

森)はい、そうだと思います。やってみたいという声も多数あります。協会も昨年に立ち上がったばかり。今後は色々と改善されていくことを期待しております。

―車いすボクシングのトレーニング方法についてお聞かせください

北岡)上半身しか使わないため、肩甲骨の可動域を広くするために、左肩と右肩を入れ替えるようなトレーニングが多くなりますね。前田さんは自宅で筋トレをされているようです。あとは、トレーナーとミットでスパーリングを行い、リングに上がっています。健常者と変わらないですね。現在RDXのサンドバッグも利用しています。とても使いやすく納得しています。

―今後車いすの入会者は増えそうですか?

森)はい、お問い合わせを数件頂いております。新型コロナウイルスが落ち着いたら数人入会する人が増えると思います。これまでは前田さん一人でしたが、人数が増えたらこれからルール作りなども必要になると思っています。

最終的にはパラリンピックの選手を
育成できるほどになりたい

北岡)そうですね、車いすの方でも「スポーツができるんだ」って事をもっと知ってほしいですね。最終的にはパラリンピックの選手を育成できるほどになりたいですね。ボクシングは有酸素運動や無酸素運動の両方を取り入れたスポーツです。ダイエットにも最適です(笑)

―いいですね、車いすの女性にもどんどんチャレンジしてほしいですね。パラリンピック初代チャンピオンは前田さんですね。

前田)恐縮です(笑)。いずれにしても車いすの方は興味があればボクシングをやってみてほしいと思います。嫌なことは本当に忘れることが出来る。一緒に汗を流せたら嬉しいですね。

―今日は貴重なお時間ありがとうございました。車いすボクシングの普及に向けてこれからも頑張ってください。

車いすボクシング
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