インタビュー | 2023.02.27 Mon
『視覚障がい者もできると伝えたい』
RDX JAPANがサプライヤーを務める東京都昭島市でブラインドボクシング普及活動を行っている『D&D BOXING GYM』。
2022年8月4日には後楽園ホールで初めての興行としてブラインドボクシングを披露し多くの人から注目を浴びた。
今回はその後楽園ホールのリングに立った関 章芳 選手、そしてD&D BOXING GYM、村松 竜二 会長にブラインドボクシングとは何か?をお伺いしました。
村松 竜二
D&D BOXING GYM会長
一般社団法人ブラインドボクシング®︎協会 会長
生年月日 1974年2月7日
出身地 山梨県甲府市
経歴 日本ライトフライ級1位。1992年プロデビュー。1994年にひき逃げに遭った際、左手の4本の指の腱を断裂。しかし左手首が動かなくなった以降も30戦を戦い抜いた。さらに、現役後半には、試合中の眼底骨折によって右目の外側の視界を失ったものの諦めずに現役を続行した。
関 章芳
D&D BOXING GYM所属
生年月日 1974年5月2日
出身地 東京都昭島市
経歴 ブラインドボクシング歴3年
―自己紹介をお願いします。
関)関章芳(せき あきよし)と申します。現在47歳です。3年前からD&D BOXING GYMでブラインドボクシングを始めました。生まれつき、網膜色素変性症という遺伝性の病気を持っています。徐々に病状が進行して、30代後半くらいにはテレビを観るのが難しくなりました。
―ボクシングを始めたきっかけを教えてください。
関)自分と同じように、視覚障がいを持っている友人に紹介してもらいました。学生時代はサッカー、20代はスノーボードと身体を動かすのが好きで、視覚障がいがあっても楽しめるゴールボールというチームスポーツをしていました。そのチームメイトの友人が、ブラインドボクシングもしていて、たまたま通っているジムが家の近所にあるということで、「じゃあ行ってみようかな」と軽い気持ちで練習会に参加しました。
―もともとボクシングや格闘技に興味はあったんですか?
関)ボクシングやK-1など格闘技全般は、好きでしたが観る専門でした。実際に自分がボクシングをしたのは、練習会が初めてでした。とても楽しく、その日の内に入会を決めました。
身体だけでなく頭もフル回転させる新感覚スポーツ
―ブラインドボクシングについて教えてください。
村松)ブラインドボクシングは、日本発祥のスポーツです。もともと名古屋にブラインドボクシングの協会があり、そこで学んだ後に、2018年に東京にジムを設立しました。1回の練習会で約10名の方が参加されています。
―ブラインドボクシングと通常のボクシングの違いは?
村松)練習方法は基本的にはボクシングと同じです。ただ、ボクサー1人に、トレーナーが1人必ず着いています。指導の仕方も、やはり視覚に障がいがあるため、体を触ったり、触ってもらったり、口だけじゃなくて体で伝えていることが大きな違いです。
―どのようにして勝敗が決まるのですか?
村松)ポイント制です。ボクサーがトレーナー相手に技を繰り広げ、その出来でポイントを競うゲームになります。ボクサーはアイマスクをして、全く見えない状態で、首から鈴をかけたトレーナーの音を頼りに動いていきます。
関)音を聞いて、相手がどんなふうに動いているのか想像するんですが、なかなか当たらなくて難しいです。ミットやサンドバックだと、いい感じで当たるのですが、実際にトレーナー相手にスパーリングさせてもらうと全然当たらないし、だからこそ、クリーンヒットしたときの感覚って、最高に気持ちいいです。
―村松さんから見て、関さんの腕前はいかがですか?
村松)関さんはかなりレベルが高いです。横に動いての攻撃をしたり、バックステップをしたり、そういう所もポイントとして評価されています。昨年開催されたプチ大会の優勝者も関さんでしたね。
関)正直ものまねだと思っています。昔、テレビで観ていて、かっこいいなと憧れた選手の動きを想像して真似しているイメージです。ブラインドボクシングは想像力が非常に重要だと思っていて、例えばロープ際で身体がロープに触れたとき、「自分は今この方向を向いているから、相手はこっちにいるはずだ」と音や触れたものから瞬時に判断しています。身体を動かしながら、頭もフル回転しています。
―プチ大会のように、ブラインドボクシングを披露する場は多いですか?
村松)他のボクシングジムが開催するスパーリング大会で披露させて頂いたりしています。あるジムはデパートの屋上でスパーリング大会を開催しており、そこでブラインドボクシングを披露させてもらった事がありますが、正直、まだあまり多くはないです。先ほどお伝えした通り、ブラインドボクシングを行う際には必ずトレーナーが1人ずつ専属で着くので人数も多いです。さらに付添いで来られている方や、盲導犬もいたりするので、通常のボクシング施設よりも安全面や環境に配慮する必要はあると思います。ただ、直近だと2022年8月4日に後楽園ホールで関さんともう一人の方にブラインドボクシングを披露していただく機会を設けられたのは良かったと思っています。
関)まさかボクシングの聖地、後楽園ホールに立てるなんて思ってもいなかったので、かなり緊張しました。ただ、ブラインドボクシングは観てもらうスポーツなので、大勢の方の前で披露できたのは本当に嬉しかったです。皆さん拍手で迎えてくれて、最高の雰囲気でした。
親子二世代で聖地・後楽園デビュー
―ブラインドボクシングを始めて、変わったことはありますか?
関)僕自身のことではなく、19歳の息子のことなのですが。僕がブラインドボクシングを始めたことをきっかけに、息子もボクシングを始めまして、実は、2023年3月22日にプロボクサーデビューをします。親子で後楽園に立たせてもらえるなんて、本当にありがたいです。
―息子さんのプロデビュー、お父さんとしても嬉しいですね。
関)プロデビューも嬉しいですが、父としては息子の成長も嬉しいです。それまで結構ダラダラした生活を送っていたのですが、ある日「体験に行ってみたい」というので連れて行くと、はまったようで。ボクシングの月謝は自分で払うからとバイトもして、2年間みっちり村松会長にパーソナルでトレーニングをしてもらって、自分で決めたことをやりきった姿が嬉しかったです。
―村松会長は、当日はセコンドですか?
村松)いえいえ、応援者の1人としていきます。視覚障がい者の方も含めて、20人くらいで応援に行く予定です。
RDXを使用してみて
―「RDX SPORTS」のグローブを使ってみた感想を聞かせてください。
関)自分が普段使っているグローブよりも、中がすごくフィットします。同じ8オンスを使っているはずなのに、すごく軽く感じて着け心地が非常にいいです。
―受けるトレーナーからの反応はどうでしたか?
関)いつもより痛いみたいです。クッション部分が凄く硬く感じるからでしょうか。自分としては当たっている感覚があって気持ちいいです。
殴り合いではないボクシング。
日本発祥のブラインドボクシングを世界へ
―ありがとうございます。関さんからブラインドボクシングへの熱が伝わってきました。
関)本当に面白いと思います。前やっていたスポーツがチームスポーツなので、人数が集まらないと、試合や練習ができない時もありました。ボクシングも、トレーナーがいないとミット打ちこそできませんが、個人で自主練習はできます。筋トレ、シャドーボクシングなど、自分1人でできるので、続けやすい点も魅力的なスポーツだと思います。
―今後の目標を教えてください。
関)まずは認知度を上げて競技人口を増やすことです。ブラインドボクシングとしてルールをしっかりと作り、正式に競技として行っているのは日本だけだと思うので、将来的に世界に広まるといいなと思います。ボクシングと聞くと、やっぱり殴り合いのイメージをされる方がほとんどだと思いますが、そうではない。プライドボクシングにはルールがあって、とても安全なスポーツだということを、若い人も含め、年齢を問わず、みんなに知ってもらいたいですね。
―昨年の後楽園ホールのように、知ってもらうきっかけを増やしたいですね。
関)後楽園は通過点です。いつかはラスベガスにまで進出できるといいですね。アメリカはボクシングへの熱が高い国ですし、パラスポーツも盛り上がっている国なので、知ってもらえればきっとチャンスはあると思います。
―アメリカンドリームがあるかもしれないですね。今後も関さん、そして息子さんのご活躍、ブラインドボクシングの発展を期待しています!ありがとうございました。
村松、関)ありがとうございました。