GLORY BEYOND DREAMS 藤原茜選手インタビュー_後編

GLORY BEYOND DREAMS 藤原茜選手インタビュー_後編

インタビュー | 2023.08.30 Wed

ただ面白いことをしたいだけなんです

彼女は様々な経歴を持つ女子プロボクサー、藤原 茜選手。

ボクシングとの出会いまでを語って頂いた前編に続き、後編ではプロ選手としての経歴、

ビジネス、今後の展望についてお伺いしました。

藤原 茜

所属:ワタナベボクシングジム
株式会社Rubia 代表取締役
生年月日: 1987年7月18日
身長:165 cm
出身地:千葉県 市川市
ランキング:日本フェザー級1位
※取材時点でのランキング

プロは怖いなと思ったが、何も成さずにやめるのは嫌だ

―ボクシングを始めた当初、東京オリンピックを目指していたとのことですがその理由を教えてください。

藤原)東京オリンピック招致が決まった時に、せっかく東京でオリンピックを開催するならトレーナーなど何かしらの形で関わるか、あわよくば選手として参加する方法はないかな、と考えました。本当に浅はかな考えなんですが、競技人口が少なく、特別な環境がなくても練習ができて、女性にとっては競合が少ない男性種目である方が有利ではと考えた時に、ボクシングはどうかなと。ちょうどその時期に開催されたロンドンオリンピックから、女子ボクシングが正式種目になったこともあり、チャンスがあるかもしれないと思ったんです。

当たり前なんですけど、始めたばかりで何年もやっている他の選手に勝てるわけもなく。だから、オリンピックは絶対無理だしどうしようかなと。当時はボクシングが好きでやっているというよりは、せっかく始めたからできるところまでやってみよう、というくらいの気持ちでした。

2017年の春先にプロテストを受けて合格して、プロキャリアがスタートしました。ヘッドギアもないしグローブも小さいし、プロなんて怖いなと思っていたのですが、何も成さずにやめるのは嫌だという気持ちが勝りました。

―プロデビュー戦について教えてください。印象に残っていることはありますか?

藤原)プロテストに合格した年の12月にデビュー戦を迎えました。私のデビュー戦の相手は既に7戦ほどやっている方でした。何がどうなっているのかよくわからないうちに試合が終わっていましたね。勝ったかなと思ったけれど負けていて、悔しいというより不思議だなと。そんなに打たれたわけでもないし、結構当てていたはずなのになと。緊張していてあまり覚えてないというのもありますが、ボクシングの試合の流れとか採点とかもよくわかっていなかったんです。

ただ、デビュー戦は失うものはないし、怪我をせずに経験を積むことが最初の頃は大事だと思っていたので、特にプレッシャーはありませんでした。

デビュー戦は緊張をしていてあまり内容を覚えていなかった
デビュー戦は緊張をしていてあまり内容を覚えていなかった

―翌年4月の試合でプロ初勝利。この時はいかがですか?

藤原)これもまた、よくわからないまま勝っていたという感じです。4回戦なので、積極的に前に出て手数を出した者勝ちみたいなところはあったかと思うんですが、この時も手数は相手選手の方が圧倒的だったと思います。だから、よくわからないなって(笑)。

―今までで一番記憶に残っている試合を教えてください。

藤原)去年の日本タイトルマッチです。キャリアも含めて圧倒的に格上の選手を相手にするので、敗戦覚悟の挑戦でした。こちらとしては、ポイント勝負は難しいので、チャンスを伺ってのKO狙いですね。でも、試合が始まると意外とポイントが取れていそうな展開で「いけるかも、意外と戦えてる」と試合中に初めて思いました。

ドローで試合にこそ勝っていませんが、自分ではいい試合だったと思います。手応えもあったし、練習でやってきたことも十分にできたし。それが絶対的な強さでないのはわかっているのですが、自分の期待値を超えた試合だったので、心から楽しいと思いながら戦えた試合でした。

―それが自信にも繋がりましたか?

藤原)繋がりました。絶対的な自信というよりも、自分がやってきたことが着実に力になっているんだな、という自信です。

わたし、行動力はあるんですが、自信がない生き物なんです。でも自分のやりたいとか、やろうという気持ちを信じて進んでいるので、そこには自信がなくてもいい。基本的に、やれるかやれないか、やりたいかやりたくないかの軸で物事を判断するので、自信の有無は関係ないんです。やったことがないのに自信を持てるって、なかなかないですし。何かをするのに自信がつくまで待っていたら、あっという間に人生が終わってしまいますからね。

だから、今一番やりたいことであるボクシングを楽しく続けてきて、結果として格上だと思ってきた選手とも戦えるようになって、堂々とやっていいんだな、と思えるようになったんです。

健康や食事の大切さに目を向けるツールを提供したい

―千葉県浦安市でお菓子屋さんを営んでいるとのことですが開業されたのはいつ頃でしょうか?

藤原)2015年なので、ボクシングを始めたのと同じくらいの時期です。栄養やファスティングの仕事で得た知識や経験から、健康や食事の摂り方の大切さに目を向けるツールになるようなものがあったらいいなと考え、地元の千葉県浦安市にお店を出しました。

グルテンフリースイーツ専門店『RUBIA』は今年で9年目となり多くのお客様に愛されている
(写真左は母の美千代さん)

テレビや雑誌など、メディアでも多く取り上げられている

―ECではなく、店舗を作ろうと思った経緯を教えてください。

藤原)オンラインのみで販売する場合でも、結局は製造販売のための専用キッチンが必要になるので、どのみち借りなきゃならないなら、店を構えてお客様に来ていただけた方が良いと思ったからです。店舗があると信用度も高くなりますし、店舗で売れればECでも売れるはずだと思い、実店舗にこだわりました。

また、地元でやっているので、知らない土地でやるよりは対面販売に強いんです。地元の地方銀行さんや事業者の方々とお取引させていただいたり、千葉県内の事業者を応援するような企画に参加させていただいたりと、地元ならではの繋がりがあるので、実店舗があった方が絶対的に有利です。

―お店のテーマはあるのでしょうか。

藤原)『わたしを甘やかす、やさしいスイーツ』です。

極力ピュアでシンプルな食材を使って、からだに優しい、でも美味しいスイーツを作る。それらを通じて、日頃の食事だったり栄養の摂り方だったりに関心を持ってもらいたい。そして、より豊かな日常に寄り添えるようにという想いを込めて製造しています。

ただ、面白いことをしたいだけで動いてます

―今後の目標について、ボクシングとビジネスの両方の観点からお伺いします。

藤原)ボクシングは、試合を重ねるたびに課題や次の道が見えてくるので、まだまだやれると思っています。まずは地域タイトルを獲って、そこから世界挑戦までできれば最高ですね。

ビジネスは、取引先の方がボクシングを応援してくれて試合を観に来てくださるとか、そこから更にご紹介いただいてスポンサー様が増えるとか、逆にボクシングのスポンサー様のご紹介でお仕事に繋がったりとか、掛算で繋がりが広がっていくのを感じています。格闘技はガチンコで殴り合うので、スポーツの中でも特に人の心に響きやすいのか、第一線でやっている人間が頑張っているビジネスって、興味を持ってもらいやすいのかもしれませんね。

あとは、格闘技とスイーツって一見相反するイメージがあると思うのですが、それが一緒になっていること自体が私的には面白くて、その面白さに惹かれてくれる人がたくさんいるので、今後はもっと面白いことを増やしていきたい。

私はスイーツにこだわっているわけではなく、面白いことをしたいだけなんです。やってみたいなとか、こういうことしたら面白いだろうな、ハッピーだろうなという構想はたくさんあるし、常にアンテナを張っているので、何か1個でも引っかかったらすぐ動けるようにしていたくて。だから、本気で格闘技をやっていることと、本気でビジネスをやっていることが、既に次の何かに繋がっていると思っています。

実際、トレーニングやスイーツ以外のお仕事をさせていただく機会が増えてきていて、それがまた楽しくて。1つの物事を極めることも大事ですが、掛け合わせてもう1個、2個、3個と面白い何かができると思ったら、それに向かって動けばいい。もちろん、そのためには極めたり鍛えぬいたりした何かを、ベースに持っていることが大前提だと思いますが。

―最後に、あなたにとってプロとはなんでしょうか。

藤原)それが生活の基盤となっていることです。例えばライセンスを持っていたらプロボクサーですが、ライセンスを持っているだけでは生活はできません。同額のファイトマネーの4回戦ボクサーが2人いても、チケットの売上や、スポンサー料などで、1試合当たりの収益は大きく変わります。アルバイトをしながらでも、職場でファンや応援者を増やしていけば、ボクシングでの収益は上げられるはずです。そのために行動できるのがプロかなと。

強くなってからスポンサーが付くのは自然なことですし、そのためにはもちろん、たゆまぬ努力や人間性が必須です。でも、スポンサーは強くなるために必要だとも言えますよね。だったら、ライセンスを持ったプロとして、その道で生活をするために何ができるかを考えたらいいと思うんです。

中には、お金はいらなくてただボクシングがしたいという方もいるので、本当にただの例えですが。プロパティシエ級のお菓子作りの腕があっても、家で作っているだけなら、それが趣味なのと同じ感じですかね。

プロが道を極めるのは当たり前のことで、それをどう自分の生活に還元するのかを考えられることが、わたしにとってのプロです。

―貴重なお話ありがとうございました。

編集後記:
藤原選手は今まで対面したボクサーに比べあっけらかんとしている(良い意味で)部分がありつつも、ボクシング、ビジネスの話しになると情熱を持って、丁寧に説明をしてくれる方でした。
もしかしたら周りからは一貫性がないと見られる部分があるかもしれませんが、彼女は点と点を自分の行動に寄って線に変える事が出来、異なった分野にリンクを付けることが出来る方だとインタビューを通じて分かりました。
ボクサーとしてもビジネスウーマンとしても今後の藤原選手に注目です!

(RDX Japan編集部)
インタビュアー  上村隆介

藤原 茜

RDX sports japanは
藤原 茜選手を応援しています。