GLORY BEYOND DREAMS シビサイ頌真選手インタビュー

GLORY BEYOND DREAMS シビサイ頌真選手

インタビュー | 2023.11.24 Fri

ヘビー級で戦っているなんて、当時の自分からは想像できなかった

彼は190㎝を超える体を武器に多くの格闘技ファンを唸らせるヘビー級戦士、シビサイ頌真 選手。
日本人としては貴重なヘビー級で、世界の格闘家達と拳を合わせる。

勝負所でずっと負けてしまった高校時代。
生活が苦しく格闘技を辞めた3年間。

あまり自分を語らないシビサイ選手の過去と現在を皆様にお伝えします。

シビサイ頌真

所属:パラエストラ東京
生年月日:1991年3月11日
身長:191 cm
出身地: 千葉県八街市
経歴:2011年Krushでキックボクシングプロデビュー。2012年からHEATに参戦し、DEEP、ZST、GRACHAN、巌流島と様々なリングで経験を積む。

2024年はリハビリのため我慢の年になる

―9月24日に行われたヤノス・チューカス選手との試合から2ヶ月が経ちました。現在のコンディションはいかがですか。

シビサイ:試合前にタイで練習した際に靭帯が切れてしまって、試合はテーピングで固定して乗り切ったのですが、来年1月に手術を控えています。手術後は、1年間リハビリに費やす予定なので、コンディションは良くないです。

―Instagramの投稿で「死兆星」が見えたと書かれていたのはそういう理由もあったんですね。ただ靭帯を負傷した状態での勝利、満身創痍の中での勝利でしたね。

シビサイ:北斗の拳が好きでその表現を使ったのもあります(笑)怪我もあり動きがかなり悪かったので、気持ちをいつも以上に高めて臨みました。相手に一発くらってから、全部被弾するようになり、苦し紛れで相手の足を掴んだ結果、自分が考えていたプランとは異なりましたが、最終的にはフィニッシュできてよかったです。

―怪我もあるのですぐには難しいとは思いますが、次の試合はいつ頃の予定でしょうか。

シビサイ:まだ決まっていないです。来年はリハビリに励みます。

ー練習場所についてお聞きしてもよろしいでしょうか。

シビサイ:スパーリングや、実戦練習をする所は、大久保のゲンスポーツアカデミーです。格闘技ができる大きな場所があり、中量級や重量級の選手が集まっています。

学生時代はヘビー級で戦うなんて想像出来なかった

―では改めてシビサイ選手の今までを振り返っていきたいと思います。まずは幼少期をお聞かせください。

シビサイ:落花生の生産量が日本一の千葉県八街市にある、普通の家庭で生まれ育ちました。格闘技に初めて触れたのは柔道で、兄の影響で始めました。幼い頃は、中学卒業時に187cm、高校卒業時に192cmと身長は大きかったのですが、体の線がすごく細かったので、今自分がヘビー級で戦っているなんて、当時の自分からは想像できなかったです。

―柔道以外にスポーツ経験はありますか?

シビサイ:友達に誘われて、サッカーをしていました。キーパーをしていたのですが、よく股の下を抜かれてシュートを決められていました(笑)

―中学・高校時代の柔道の成績を教えてください。

シビサイ:学生時代は柔道中心の生活でしたが、千葉県で優勝するようなことはなく、地区大会で2-3位が最高です。高校最後の千葉県大会で3位でしたが、勝負どころでずっと負けていました。

―柔道時代に印象に残っている思い出はありますか。

シビサイ:高校の時の先生が、かなり怖い先生だったことです。部活に遅刻した時に遅刻した時間分、練習中ずっと走らされたことを覚えています。あんなに怖い先生が電話した時に、びっくりするぐらい優しくて、「ゆっくり来て大丈夫だから」と言ってくれたんです。結局は罰走させるためにゆっくり越させたという (笑)ただ柔道をして礼儀を学べたのは良かったです。

ー中学・高校時代の自分はどんな性格だったと思いますか。

シビサイ:今と変わらないです。友達とふざけ合う時はふざけ合い、特別大人しいわけでもなく、普通の体育会系の男の子だったと思います。

―柔術を学び始めたきっかけは何でしょうか?

シビサイ:18歳の時に、パラエストラという全国にネットワークがある格闘技の千葉支部で活動を始めました。中学1年生の時に町道場にいた柔道出身の先輩がプロ格闘家になり、そこで自分もプロになることを意識しました。そこで、柔道に似た柔術から始めて、プロになりたいなと思っていました。

柔道以外の世界で、どこまで出来るのか知りたかった

―プロデビューしたときのことを教えてください。

シビサイ:Krushでキックボクシングデビューを果たし、その後、総合格闘技のライトヘビー級、93キロで試合をしています。元々総合格闘技に出たかったのですが、あえて自分の得意な柔道ではない所で、プロデビューしてみたいと思っていました。

―キックボクシングで思い出深いことはありますか。

シビサイ:初めて人の顔を本気で叩き、人の丈夫さに驚きました。また、脛で硬いミットを蹴ったり練習をして、痛みにも慣れてくるのですが、決して脛が硬くなるわけではないので、痛い時は痛いと思いました。

―試合までの減量も含め、調整で難しいと感じることはありますか。

シビサイ:僕は減量を経験したことがないのですが、ヘビー級で試合するにあたり体重を落とさないように意識しています。

―2012年から2015年の間、格闘技から離れていますがその理由は何でしょうか?

シビサイ:総合格闘技ではHEATという団体で出ていたのですが、2回試合に負けて、一度離れています。夜も働いていたので、練習時間も確保できず生活が苦しかったんです。でも、生活が落ち着いて、夜の仕事を辞めてからは体調も回復し、格闘技をまたやりたいなと思い、DEEPやGRACHAN、様々な団体で出場させていただきました。

―格闘家が掛け持ちでどんな仕事をしているのか興味がある方も多いと思います。よろしければどんな仕事をされていたか聞いても良いですか?

シビサイ:クラブのセキュリティです。酔っぱらいに叩かれたり、大変な思いもしました。ただ、そこで働いている時に知り合った人脈が今もすごく大切でして。結果的には3年間空いてしまったのですが、自分にとって必要な時間だったと最近は思います。

―様々な格闘技ジャンルを経験している中で、どの競技からどの競技に転向したのが一番難しいと感じましたか?

シビサイ:柔道から柔術はかなり似ているので、あまり苦労はしませんでした。キックボクシングでは、パンチが顔に飛んでくることへの恐怖心があり、一番苦労しました。顔に飛んでくるパンチに対して、怯まずに、手を添えてガードしたりできるようになるとディフェンス力が上がっていったのを感じています。

―ヘビー級では外国人選手との対戦も多いと思います。日本人選手の対戦と比べていかがですか。

シビサイ:海外の選手はセコンドの言葉が分からないので、次何をしてくるのかという不気味さがあります。また海外の選手は日本の選手と比べて映像等の情報が少ないですね。

RIZINという大きな舞台で緊張に飲まれないか最初は不安だった

―RIZINの大会にも多数出場されていますが、RIZINの大会の印象はいかがですか?

シビサイ:会場の規模や観客数が違います。また、試合前の計量や、ミーティングにもかなり緊張感がありますね。試合前の煽り映像もしっかり作っていただいて、RIZINは魅せ方が上手だと思います。

―RIZINに参戦したきっかけを教えてください。

シビサイ:巌流島に出させていただいている時に、3-4連勝したのですが、ヘビー級で強い人枠として、巌流島からRIZINに刺客を送り込みます、という流れを作って出させていただきました。

―RIZINに出始めた頃の気持ちはいかがでしたか。

シビサイ:不安が多かったです。格闘技だけで生活しているわけではなかったので、練習不足という不安もありましたし、舞台がすごく大きいので、自分が緊張にのまれないかも不安でした。ただ、大会の規模が大きいので、反響も大きくありがたかったです。復帰したらRIZINに出る予定なので、これからも頑張ります。

―ヘビー級で戦う上で大変なことはありますか。

シビサイ:日本人の人数が一番少ないので、とてつもなく強い海外の選手と当てられた時はきついですね。これまで戦ってきた中では、スダリオ選手との試合が一番しんどかったです。結果的に勝つことができたのですが、スダリオ選手が全く倒れなくて、経験した中で一番しんどかったです。

―試合前に、対戦相手を見てこの人は強いかもしれないと思う瞬間はありますか。

シビサイ:難しいですが、印象に残っている選手がいます。試合前の計量の時はすごく静かだったのに、試合で入場する時にすごく空気を作ってきた選手がいて、とてもびっくりしました。本当に別人のようでした。

―2022年9月25日のカルリ・ギブレイン選手との試合で人生で初めて鼻血が出たという記事を見ました。

シビサイ:子供の頃から一度も鼻血が出たことがなかったので、人生初の鼻血が試合中で本当に焦りました。練習でも必ずヘッドギアをつけていますし、試合でも真正面から強いパンチを打ち抜かれたことがなかったので、ギブレイン選手と試合をしたときに、まっすぐ来てびっくりしました。このまま止まらなかったら試合が終わってしまうという焦りもありましたが、幸い勝てて良かったです。

―子供の頃から怪我はあまりしないんですか。

シビサイ:骨折、擦り傷くらいはありますが、体質なのか鼻血はありませんでした。2年前にもありましたが、一番大きい怪我は靭帯の断裂です。リハビリに1年程度かかる予定ですが、まだ引退したくないので、もう1度リハビリを頑張ります。

―ふと、格闘技に触れたくない、関わりたくないと思う事はありますか。

もしあれば理由をお聞きしたいです。

シビサイ:あります。負けた後や、漠然と将来が不安になる時、今回の怪我のように長期間試合ができない時には、試合をするのが格闘家なので、不安になります。試合ができないことは不安ですが、年齢的にはキャリアの後半なので、歯がゆいですが、しっかり治して、なるべく長く良い状態で続けられるように頑張りたいと思います。

続けなくてはならない使命感がある

―格闘家としての今後の目標をお聞かせください。

シビサイ:RIZINのヘビー級で、強い外国人とどんどん戦って、勝つことです。その先に形が残るベルトのようなものがあるので、それに向けて頑張っていきます。

―最後にお聞きします。シビサイ選手にとってプロとは何ですか。

シビサイ:元々格闘技が大好きで始めたのですが、今は楽しい気持ちよりも、大変な気持ちの方が強くなっています。でも、ここに来るまでにお力添えいただいた方もすごくたくさんいるので、嫌だなと思っても、続けなければいけないと思った時に、初めてプロとしての自覚を持てるのかなと思います。楽しいからやるのも正解だと思いますが、自分がやりたくなくてもやらなきゃいけない時があるのがプロだと思います。

―貴重なお話ありがとうございました。復帰後の試合を楽しみにしております!

編集後記:
交差点からこちらに歩いてくるだけでも圧倒的な存在感!しかし声も表情も穏やかでインタビュー中も優しさが滲み出てくる方でした。復帰後は更にスケールが大きくなったシビサイ選手をリング上で見られる日を楽しみにしております!
(RDX Japan編集部)
インタビュアー  上村隆介

シビサイ頌真

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