GLORY BEYOND DREAMS 原口央選手 インタビュー

インタビュー | 2024.2.26 Mon

格闘技をしている以上、ずっと挑戦したい

彼は第3代GLADIATORフェザー級王座の原口 央 選手。
男4人兄弟のレスリング一家で育ち、常に身近に格闘技があった。

『有名になりたいわけじゃない、ただ強くなりたい』

彼の言葉には、単なる名声や注目を集めることではなく、自身の成長と向上に真摯に取り組む姿勢が滲み出ている。
強さに対して真っ直ぐに生きてきた原口選手に過去を振り返って頂き、今後の展望についてお聞きしました。

原口 央 (はらぐち あきら)

所属:BRAVE
生年月日:1995年4月29日
身長:170 cm
出身地: 鹿児島県 鹿屋市 串良町
経歴:
第3代GLADIATORフェザー級王座
2023年 ROAD FC 63kgトーナメント 準優勝

気持ちの高まりをコントロールする難しさを感じた

―2023年は、韓国の格闘技団体ROAD FCに出場をされていました。韓国でもMMAの人気が高いとのことですが大会の雰囲気などいかがでしたか。

原口)今、MMAの熱が高まっている韓国の中でも一番大きな大会で、僕が出た試合も韓国中で生放送されるくらい注目されている大会でした。アメリカなど欧米に近い会場の作りに似た雰囲気でした。

―今年に入って練習中に怪我を負ってしまったとのことですが、怪我の具合はいかがですか。

原口)もともと大きい怪我をするタイプではないのですが、練習を詰め込みすぎてオーバーワークになった結果、腰を疲労骨折してしまいました。最初は何もできない状況でしたが、今はだいぶ良くなって少しずつ練習も再開しています。試合に向けて気持ちが昂りすぎて練習を詰め込みすぎたせいなので、コントロールの難しさを改めて感じました。

―普段の1日の練習量はどのくらいなのでしょうか。

原口)基本は2部練で、まず午前11時半くらいから2時までBRAVE所属のプロのファイターが集まって練習をしています。夜はクラスで指導をして、最後に会員さんとスパーリングの時間を設けています。それ以外にも週1-2回は出稽古にも行っています。

レスリングが常に身近にある家庭でした

―原口選手の生い立ちをお伺いしたいのですが、幼少期の頃はどのように過ごしていましたか。

原口)鹿児島県鹿屋市串良町(かのやしくしらちょう)という、家の周囲に畑しかない田舎で育ちました。小学校まで毎日、片道40分、坂道がある道を通学していて、今思えば子供の頃からトレーニングを自然としていたのかもしれません(笑) 男4人兄弟のレスリング一家で、長男と僕と弟が大学まで、次男は高校までレスリングをしていたので、そんな環境を与えてくれた親に感謝ですね。幼少期はおふざけが好きな性格で、特に弟と仲が良かったのですが、僕がちょっかいを出してよく泣かせていた記憶があります(笑)

―レスリングを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

原口)小学2年生の時です。父に好きな習い事をしていいよと言われ、地元のレスリングクラブに通っていた兄の影響もありレスリングを始めました。レスリング以外に習字も習っていて、今でも字が綺麗と褒められることがあるので、習字もしていてよかったと思います。

子供の頃、憧れの山本“KID”徳郁さんとレスリング全国大会で会うことが出来た
(写真左上:原口 央 選手)

―原口選手の同世代はレスリング出身の有名な格闘家が多い印象です。

原口)RIZINに出場してる武田光司 選手が同学年、UFCで戦ってる中村倫也 選手が1個上にいます。階級が違うので戦うことはありませんでしたが、レスリング時代から強くて有名でした。

―いつ頃から総合格闘技にチャレンジしたいと思われたのですか。

原口)小学4-5年生の頃です。元々K-1が好きで、特に魔裟斗選手が大好きだったのでよくテレビで試合を観ていました。ある日K-1だと思ってテレビを観ていたのが実は総合格闘技で、山本KID選手と宇野薫選手の試合がとてもかっこよく、自分も総合格闘技をやりたいと思いました。

―実際に総合格闘技を始められたのはいつなのでしょうか。

原口)大学卒業後、半年間自衛隊として働いていた時期があります。鹿足に海上自衛隊基地があり、実は父も自衛隊だったんです。自衛隊で働いていたのは、レスリングを続けようと思っていたからだったのですが、いずれMMAをすると決めていたので、入隊後半年で完全に切り替えました。

―総合格闘家の道へ進むことを決められてから、最初にした行動は何でしたか。

原口)レスリングを活かせるジムを探しました。現在も所属しているBRAVEの宮田代表がレスリングでオリンピックに行っているぐらいすごい選手で、武田光司 選手にインスタでDMして紹介してもらいました。

BRAVEジムに所属した決めては、
レスリングを活かせるジムだったからと語る

―レスリングと総合格闘技の違いをアジャストさせるまでどのくらい期間がかかりましたか。

原口)今でもまだ模索中です。打撃や寝技に関しては素人だったので、最初はレスリング技に頼るしかありませんでした。ジムに入会し半年後にはデビュー戦を迎えたのですが、試合時間の違いにも最初は戸惑いました。レスリングは3分2ラウンドだったので、5分2ラウンドの試合がこんなにもきついんだと衝撃を受けました。1ラウンド目が終わって、セコンドに戻って来た時に顔が真っ青で、みんなに心配されましたが、デビュー戦では判定で勝つことができました。

―2021年にGLADIATORフェザー級王者になられましたがこの時の気持ちはいかがでしたか。

原口)プロ7戦目でベルトを獲ったのですが、嬉しかったのは試合が終わってベルトを腰に巻いた瞬間だけでした。ベルトを獲ったことで追われる立場になりますが、僕自身、格闘技をしている以上ずっと挑戦したいと思っているんです。その時はベルトを巻き続けても成長できないと思い、挑戦する立場にいたいと思って数試合後にベルトを返上しました。

―2021年には総合格闘技を目指すきっかけともなった、宇野薫選手と試合をされました。憧れの選手との試合はどのような感情が沸き起こりましたか。

原口)宇野薫選手、山本KID選手、所英男選手にずっと憧れていたので、自分にとってヒーローの宇野選手と試合ができるということが何より楽しく、勝てて嬉しかったです。これまでのキャリアの中で一番の思い出になりました。山本KID選手にも小学生の時にキッズレスリングの全国大会でお会いして、写真を撮ってもらったことがあります。今後もう1人のヒーローの所選手とも試合をして、超えたいなとずっと思っています。

2021年には憧れの宇野 薫 選手との試合で勝利を収めた

―2022年5月にはRIZINにも出場されました。今までの試合、大会と比較してRIZINのレベルの高さをどう感じましたか。

原口)宇野選手に勝ってから、どこか大きい団体で試合をしたいと要望を出し、RIZINへの出場が決まりました。1戦目に関鉄矢選手というZSTのチャンピオンと対戦した時、力の差はそこまで感じなかったです。むしろもっとRIZINのルールを理解しておけばよかったなと思いました。団体によって何を重視するのかが異なるので、その理解が足りなかったなと思います。ちなみに韓国のROAD FCではダメージを重視しているので、僕のようなコントロールタイプのファイトスタイルはあまり評価されないなという印象でした。

―今後、挑戦したい対戦相手や団体はありますか。

原口)団体や対戦相手にこだわりはなく、とにかく強い選手と試合をしたいです。戦えるなら場所はどこでもいいかなと思っていますが、将来的にはアメリカでも戦ってみたいですね。

―キャリアの中で、一番印象的に残っている試合があれば教えてください。

原口)直近のキム・スーチョル選手戦です。雲の上の存在の選手だと思っていたので自分にとって最大の挑戦でした。ただ、試合をやっていくうちに自分が戦えていることに気付き、戦える自分がいるからこそ、もっと海外に挑戦してみたいなと思いました。

―弟の原口伸選手はUFCにチャレンジされてますね。兄弟で支えあって戦っているという印象があります。

原口)弟も先日UFCの予選に出場していました。僕も弟も、海外で戦うということに魅力を感じています。野球で言うとメジャーリーグに行きたいという感じです。弟とは練習場所もずっと一緒で、お互いの試合でセコンドについているので、僕のことを一番理解しているのは弟だと思います。

弟の原口伸 選手の試合ではセコンドに付いてフォローしている(写真左:原口伸 選手)

―今後の目標をお聞かせください。

原口)格闘技をしている以上、自分はずっと挑戦者だと思っているので、とにかく強い人に挑戦をして戦い続けていきたいです。有名人になりたいとは思っていないので、どんな試合でも、どんな団体でも良いので、挑戦し続けたいです。

―最後にお聞きします、原口選手にとってプロとは何でしょうか。

原口)野球とかサッカーでもそうですが、プロとは次世代を担う子供たちに夢や希望を与える存在だと思います。プロ野球でも今は大谷翔平選手がすごく活躍していて、それで野球をやりたいという子が増えていると思いますし、次の世代に夢を見させる存在がプロですね。

―UFCなどで活躍する日本人が何人も出てきたら、日本での取り上げられ方も変わってきますよね。

原口)絶対変わってきます。日本人がUFCなどで活躍する姿を見て、自分も頑張ればこういうところに行けるんだと思う子どもも増えていきますからね。日本人で体格差を乗り越えてここまで活躍できる大谷選手と井上尚弥選手をリスペクトしていますし、自分もそのようになりたいです。

―今回はお時間頂きありがとうございました!今後の活躍にも期待しております!

編集後記:原口選手と初めて会ったのは、武田光司選手が開催したファンミーティングでした。その場で、彼が良い意味で格闘家らしくない印象を最初に持ちました。しかし、格闘技の話題になると、彼の目は一変してとても鋭く、強い人だなと感じました。彼の努力と情熱が、彼を更なる成功へと導いてくれることを信じています!(RDX Japan編集部)
インタビュアー  上村隆介

原口 央

RDX sports japanは
原口 央選手を応援しています。