インタビュー | 2024.2.6 Thu
『15歳でプロになってベルトを取ることしか考えてなかった』
彼はONE Championship、RIZINの舞台で戦っている格闘家、小川翔 選手。
WBCムエタイ日本ライト級王者、HOOST CUP日本スーパーライト級王者など多くのベルトを巻いてきた生粋の格闘家。
15歳からプロとして生活をしてきた小川翔 選手にONE Championshipでの戦い、そして幼少期から今までの足跡をお伺いしました。
小川 翔(おがわ しょう)
所属:OISHI GYM
生年月日:1993年6月10日
身長: 172cm
出身地: 愛知県日進市
経歴:
HOOST CUP日本スーパーライト級王者
WBCムエタイ日本ライト級王者
蹴拳ムエタイスーパーライト級王座
その他、多数
歯が5本も抜け、試合後にタイの病院に緊急入院
ー前回の試合(2024年1月12日)はヌンパンニャー選手と非常に激しい試合となりました。その後、体調はいかがでしょうか?
小川)実は、前回の試合で歯が5本も取れたんです。肘を数発くらって、試合中も口の中に歯が落ちている状態でした。2本は元の歯を引っ付けたのですが、3本はどうにもならない状態です。試合後、タイの病院に入院したので帰国が予定より遅れてしまいました。
ー試合を見てダメージを心配しましたが、やはり即入院されていたんですね。では改めて試合の感想をお聞かせください。
小川)今回は1ラウンド目をローとボディーで組み立てて、そこから上に合わせていこうと思っていて、1ラウンド目でペースを掴んだと思っていました。2ラウンド目で相手が作戦を変えてプレッシャーをかけるために肘を狙ってきて、対応したのですがくらってしまって、KO負けという残念な結果に終わってしまいました。
ー今回はONE Championshipでは3試合目でしたが、試合に向けてどういったコンディション作りをされましたか?
小川)ONEではハイドレーションという尿検査があるので、それに合わせたコンディション作りをしっかりしてきました。水は抜かずに動いて調整を行って、体調は万全でした。試合が金曜日なので火曜日に現地に入って、時差も2時間なので特に影響はありませんでした。温度差も、寒い日本より暖かい国の方が動きやすいので、大丈夫でした。
ールンピニースタジアムでの試合は独特な雰囲気を映像からも感じますが、実際戦ってみていかがでしょうか。
小川)歓声がとにかく凄くて、セコンドの声が全く聞こえないほどでした。僕は目が悪いので、周りの状況はあまり見えていないのですが、日本では味わったことのない歓声に圧倒されました。
ー審判の判定で、ホーム選手に有利な判定をしていると感じたことはありますか?
小川)僕の試合だけでなく他の試合もそうですが、若干ホーム選手寄りかなとは思います。また、パンチよりも、蹴りの印象が強い選手が勝ちやすいのかなと感じました。
ー前回の試合 (ペトガーフィールド・ジットムアンノン戦) で試合後、敗北したにも関わらず会場を沸かせたとして賞金ボーナスがありました。どのようなやりとりがあったのでしょうか。
小川)試合後コーナーポストに戻った時に、通訳の人に「おめでとうございます。あなたはボーナスをもらえます。」と言われて、試合には負けたけど、評価されたんだなと思いました。日本ではない珍しい経験をしましたね。
ーONEの大会の雰囲気はどうですか。
小川)すごく、世界で戦っているなと感じます。特に前回の1月12日の試合は自分しか日本人がいなかったので、日本代表のような感じで注目されたなと思います。ただ、特にアウェーの雰囲気はありませんでした。
父の影響を受け空手を始めた
ー改めて小川選手の幼少期の頃から振り返っていきたいと思います。格闘技との出会いをお聞かせください。
小川)愛知県日進市で生まれ育ち、父が空手をやっていた影響で、年長の時に空手を始めました。それまではやんちゃで喧嘩もよくしていたみたいですが、極真空手を始めてからは、礼儀がすごく学べたと思います。挨拶や、物をもらう時に片手ではなく両手で受け取るというように、礼儀作法を厳しく教わりました。性格的にも他の小学生と比べると、すごく落ち着いている方だと思います。今でも格闘技選手らしさがあまりないとよく言われます。
ー小学校3年生の頃にボクシングを始められたとのことですが、きっかけはありましたか。
小川)父が、元々顔面ありの方をやらせたいという希望があって、ボクシングを勧められました。僕自身も空手ではなく、顔面ありの競技を見ることが多かったので、興味はあったと思います。最初は空手との距離感の違いや、顔面に向かってくるパンチの対処等に慣れないことだらけでしたが、練習して慣れていきました。当時は空手とボクシングを両立していたので、毎日練習漬けの日々でしたね。
ーどのような少年時代を過ごされていましたか?
小川)勉強よりも格闘技という感じだったので、勉強は得意ではなかったです。小学校では部活でサッカーをしていて、ディフェンスとキーパーをやっていました。中学時代、最初は柔道部に入ったのですが、部員が少なくモチベーションが上がらなかったので、サッカー部に転部しました。実は野球をしたこともあって、様々なスポーツに取り組んだのですが、一番伸びるのは格闘技だなと思いました。
ー小学校6年生の頃に、空手の世界大会で優勝しているんですね。
小川)そうです。強い相手と戦いたいと思い数多くの試合に出て、結果を残してきました。小学3-4年生の頃には、周囲の人から強いと言われるようになったのですが、自覚はあまりなく、試合が待ち遠しかったです。
ーキックボクシングを始めたきっかけを教えてください。
小川)中学生の頃に空手の出稽古という形で大石道場に行くようになりました。その後、大石道場がキックボクシングも始めて、誘われて参加したのがきっかけです。練習環境も変わって、ひたすらスパーリングばかりになっていました。
ー第1回K1トライアウトに特別枠で出場されています。中学1年生での参加は珍しいですね。
小川)そうですね。トライアウトも受けて合格したのですが、年齢が若かったので特別枠になりました。会場の控え室に行かせてもらって、レイ・セフォーの試合を見たりしていました。
ー中学、高校時代の一歳の年齢差は身体的に大きいかと思いますが、体の作りとか、身長はいかがでしたか。
小川)中1の時と今の身長があまり変わらなくて(笑)
ーその時点で体は出来上がっていたのですね。
小川)そうですね。ずっと変わってないです(笑)
魔裟斗選手と同じリングで戦いたいと思いプロの世界へ
ー15歳でプロデビューされています。非常に早い段階でのプロデビューですが、プロを意識し始めたのはいつ頃ですか。
小川)キックボクシングを始めた時からです。当時は魔裟斗選手がすごく活躍していて、同じリングで戦ってみたいと思っていました。なので、プロになるというよりは、チャンピオンになると決めていました。両親にも特に相談することはなく、応援してくれていました。中3の冬に、アマチュアの全日本トーナメントに出場して、決勝で負けたのですが、実績が認められて、プロデビューすることができました。
ープロデビュー戦について印象に残っていることはありますか。
小川)今はないのですが、J-NETWORKでデビューしました。初戦から対戦相手が強く、判定でなんとか勝てたことを覚えています。プロデビューして、もっと強くなりたいという思いが強くなりました。
(本人Instagramから引用)
ープロとして活動をしながら、高校にも通われていたんですよね。
小川)月曜から金曜日まで普通に学校に通っていたので、大変でした。工業高校に通っていたので留年の心配はあまりなく、機械のことを学んだり、溶接をしたりという授業が面白かったです。
ー今までで一番印象に残っている試合やタイトルはありますか。
小川)REBELSムエタイで、最初に獲ったベルトです。王者決定戦の相手との戦績が1敗1分で、3度目なので絶対勝たなきゃいけないと気合を入れて臨みました。会長・コーチと対策して作戦を立てて臨んだ試合で、チームとしての一体感を感じながら勝てた試合で、さらに初めてのタイトルなので一番思い出に残っています。
ー2018年の8月にRIZINに初参戦。RIZINに誘われた経緯を教えてください。
小川)シュートボクシングの海人選手との試合だったのですが、試合の9日前に声が掛かりました。普段より重い階級で出ることになったのですが、このチャンスを逃せないと思って試合を受けました。やはりRIZINは日本の興行で一番大きい大会ということもあり、反響は大きかったですね。
ー2021年に網膜剥離の手術を受けられています。いつ頃から目の調子が悪いなと思われたのですか。
小川)試合後1週間くらいした時に、急に視界が白く濁って見えたので、焦って病院に行きました。それで即入院・手術を受けることになりました。今でこそ網膜剥離は手術で治ると言われていますが、当時の僕は知らなかったので、引退がよぎりました。結果的に4-5ヶ月で復帰できてよかったのですが、網膜剥離になったことでRIZINの試合機会を逃してしまったので、治療中は早く復帰したいと思っていました。
ー普段、体を維持するために行っているルーティンや食生活はありますか。
小川)特にルーティンはありません。強いて言うならお米は玄米にしていることくらいです。ジャンクフードやお菓子も月1-2回食べるくらいです。
ー今年、愛知県にジムをオープンするんですよね。
小川)3/4にオープン予定です。フリー会員を呼んで、週2くらいでパーソナルをやろうかなと計画中です。空手もいれていこうかなと思っています。たまたま買ったキックミットがRDXさんのものだったので、これから使わせていただきます。
(本人提供)
ー今後の目標をお聞かせいただけますか。
小川)怪我の全治が半年なので治療に専念して、オープンするジムを成功させるということが今の目標です。これまで68戦してきて、前回初めてKOされたので落ち込んでいるんです。なので、これからのことについては今考え中です。
ー最後にお聞きしますが小川選手にとって、プロとは何でしょうか。
小川)人の心に響く試合を見せるのがプロだと思います。勝敗に関わらず、勝負して面白い試合をするのがプロですね。
―ありがとうございます。まずは怪我からの回復、ジムの成功に向けて頑張ってください!
編集後記:ジムをオープンするにあたりRDXのキックミットをご購入頂いたのが出会いのきっかけでした。試合で歯が5本も欠けたので話しが伝わりにくいことを懸念しておりましたが、問題なくインタビューは行えました!まずはオープンするジムの成功を願いつつ、再びリングに上がるときは精一杯応援させていただきます!
(RDX Japan編集部)
インタビュアー 上村隆介