GLORY BEYOND DREAMS 山口 裕人選手 インタビュー

インタビュー | 2024.5.30 Thu

格闘家はお客さん楽しませて、なんぼですよ

彼はクレイジーピエロの異名を持ち5つのベルトを獲得している格闘家、山口裕人 選手。

『KOで勝たないと面白くない、その分、KOで負けますけどね』と笑って語りはするが、そこには彼の格闘家としての美学が強くありました。

今回は、山口 裕人選手の過去を振り返り、その魅力に迫ります。

山口 裕人(やまぐち ひろと)

所属:道化俱楽部
生年月日:1992年5月20日
身長:170cm
出身地:大阪府松原市
経歴:
WPMF世界スーパーライト級暫定王者
元WBCムエタイ日本統一スーパーライト級王者
元イノベーションスーパーライト級王者
元DEEP☆KICK-63kg、-65kg級王者

最初は違う競技をしているのかと思うぐらい、グローブの違いを感じた

ー改めまして今回はインタビューよろしくお願いいたします。まずは次戦についてお聞きしたいのですが、6月15日(土)に伊藤澄哉 選手との試合が決定しています。現在のコンディションはいかがですか。(※インタビューは5月30日に行われた)

山口)コンディションは良いですよ。残すところは減量ですが、減量も順調に進んでいます。以前は試合ごとに階級を変えていましたが、徐々に階級を上げて最近は65kgで安定しています。

ー今回の試合もオープンフィンガーグローブマッチとなります。オープンフィンガーグローブはパウンドグローブに比べて薄いのでダメージが大きそうですが、いかがでしょうか。

山口)オープンフィンガーグローブでの試合も次で6回目になります。パウンドグローブとの違いにも慣れてきましたが、グローブの大きさの分、距離感が変わるので、最初は違う競技をしているように感じました。また、グローブが薄い分ダメージもありますし、怪我をすることも増えたので試合数も減りました。

ー去年のYA-MAN選手とのタイトルマッチの試合は負けてしまいましたが、壮絶な打ち合いの試合でしたね。私のような素人が見ても面白い試合でした。

山口)先にダウンを獲りましたが結局やられてしまいました。昔から僕は全力でダウンを獲りに行くファイトスタイルなので、双方にダウンの応酬となりました。最近はポイントを稼ぐ戦い方をする方もいますが、僕はそれを格闘技だと思っていないです(笑) 観に来てくれている人が喜ぶような試合を心掛けています。

ー前回の試合から期間が空いていますが、体の状態はいかがだったのでしょうか。

山口)試合のダメージもありましたし、ずっと怪我を庇いながら戦っていたので、この機会にしっかりと休養の時間を取りました。一番大きい怪我をしたのはアマチュアの時ですが、オープンフィンガーになってからも絶えないですね。顔もよく切るので58針も顔を縫ってるんですが、もう笑えてきます(笑)

楽しいとは思えなかった空手、でも今は感謝している

ー改めて山口選手の過去を振り返っていきたいのですが、幼少期はどんな性格の子でしたか。

山口)生まれは大阪府松原市というところで、性格はやんちゃかどうかはわかりませんが、まじめなタイプではありませんでしたね(笑) 5歳から中学生の時まで空手をしていて、その後は知人がトレーナーをしていた縁でキックボクシングを始めました。

ー空手を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

山口)親が我流で空手をしていたんです。当時は空手に楽しいイメージはなかったですね。痛い思いもするし、練習も大変だったので。礼儀に対して厳しいとも当時は思っていましたが、今となっては大切なことと理解出来るので空手をして良かったと思います。組み手やフルコンタクト、全部の大会に出ましたが、得意だったのは面付きです。トロフィーも獲っています。

少年時代は空手の大会で優勝を経験している(撮影:2007年3月11日)

ー小学生の頃から身体能力は高かったとは思うのですが、武道以外のスポーツをされていましたか。

山口)小学生から中学生まで野球をしていました。ポジションはサードです。小さい時はプロ野球選手になるのが夢でしたが、気付いたら格闘家になっていました(笑)

ースポーツ以外で得意な科目などはありましたか。

山口)勉強は出来た記憶がありません(笑) 音楽や技術も苦手で、得意科目は体育で特に球技が好きでしたね。

ー弟の山口侑馬 選手も格闘家としてご活躍されていますが、子供の頃から仲は良かったですか。

山口)仲はずっといいですね。ただ1度、大喧嘩して殴り合いになってしまって兄弟で病院送りでした(笑) 喧嘩した理由は本当些細なことだったんですが(笑) 

子供の頃から弟の侑馬 選手とは仲が良かった(写真左:裕人 選手)

ー山口兄弟の喧嘩は止める方も命がけですね(笑) アマチュア時代のキックボクシングの大会成績はいかがでしたか。

山口)数多くのアマチュア大会に出ましたが、7連敗したこともありました。基本は1ヶ月に1-2回試合に出ていたので勝ったり負けたりです。でも、弟はアマチュア時代、6年間無敗だったんです。でも僕はプロになった後は8連勝して3-4年無敗だったのに対して、弟は3年ぐらい負けが多くて、プロとアマチュアは違うなという話をしました。

負けた時は正直へこんでますよ(笑)

ープロを意識し始めたのはどのタイミングだったんですか。

山口)アマチュアで勝って成績上がってきたから、次のステージとしてプロはどうかと言われたので、自分からプロになろうと思ったことはありませんでした。プロはアマチュアと異なり防具がないので、当たればダウンが獲れることは大きな違いだと思います。僕はファイトスタイル的に昔から派手に勝つし派手に負けるので、身内からしたら心配で仕方ないとよく言われます(笑) みんなとは違う、自分ならではの魅せられるところを観せていきたい気持ちが昔から強いですね。

ープロデビューは2008年になりますが、デビュー戦で何か印象に残っていることはありますか。

山口)当時、体重が57キロで、減量にはあまり苦労しなかった記憶がありますね。緊張はしましたが、KOではないですけどデビュー戦は勝てましたね。アマチュアで7連敗後に、プロデビューして8連勝したのでプロの方が向いてたのかなと思いました。

2012年4月29日に開催されたDEEP☆KICK 11
で行われた試合で初めてのベルトを獲得
(引用元:GBR)

ー期待をかけられればかけられるほど燃えるタイプなのかもしれませんね。山口選手の戦績を見ると負けも多くあります。山口選手にとって「負け」をどのように捉えて受け止めていますか。

山口)周囲には悟られないよう振舞いますが、勝ちたいがために戦っているので、負けた時は正直へこんでますよ(笑) 常に壁にもぶち当たっていますが、悩んでも体を動かすしかないので、練習や日々の鍛錬から何かをつかんで、乗り越えての繰り返しです。考え方を日々変えて、その繰り返しでどうにか上がっていく生活をずっとしてる感じですね。

ー格闘技は他の競技と比べ試合数が多くないからこそ、1試合1試合が大切になりますよね。

山口)そうですね。特に僕のプレースタイル的に勝ちも負けも多いので、強くそれは痛感しています。たった3分×3ラウンドのために何ヶ月もかけて準備をして、厳しい減量もして、10分で全てが決まりますからね。僕は年間で最高5試合したことがありますが、怪我もするしボロボロになります(笑)

ー今まで様々な対戦相手と戦ってきていますが、印象に残っている試合や対戦相手を教えてください。

山口)正直KOで負けることも多いので、相手のここが強いというポイントはあまりわかりません。実際、負けても少しの差だと思っています。例えば、YA-MAN選手は最近試合をしたのでより印象に残っていますが、考えて戦っていて、うまいなと思いました。ガードして、返して、と格闘技をしっかりしているなという印象です。白鳥大珠 選手は拳が硬くて、パンチが痛かったのを覚えています。昔の対戦相手ですが、木村ミノル選手と試合をしたこともあります。もう10年以上前ですがその頃からパワーがすごくて、ジャブでも痛かったです。強い選手はこんな感じなんだ、と当時感じましたね。

ーベルトも5本獲得していますよね。印象に残ってるベルトがあれば教えてください。

山口)5本のベルトの中では、WPMF世界スーパーライト級暫定王者を決めたベルトが最も印象に残っています。暫定という言葉はずっと引っ掛かってますけどね(笑) 僕はずっとムエタイに出ていて、ムエタイのベルトを3つぐらい獲っているので、次はRISEのベルトが欲しいですね。ここ最近はオープンフィンガーでの試合も多いので、またYA-MAN選手に挑戦してベルトを奪いたい気持ちもあります。

ベルトは獲れるだけ獲りたいと強く語っていた

ームエタイとキックボクシングではどちらが自分に合っていると思いますか。

山口)今はキックボクシングだと思いますが、ムエタイからRISEに行った時は、戦い方がわからなかったですね。3ラウンドの戦い方がわからないし、リズムが違うなと思って、最初はやられました。肘を使えるかどうかもかなり大きくて、今は大丈夫になりましたが、僕も弟もムエタイの時は肘でKOをしたこともあるので、最初はどう戦えばいいか悩みましたね。

ームエタイの方が、肘を使える分、危ない印象があります。

山口)危ないですし、痛いです。歯が折れてしまう人も多いですし、僕自身も全部肘の攻撃を受けて顔は傷だらけです。どれだけ勝っていても肘で逆転される怖さもありますね。でもそれが面白いなと思う部分でもあります。

親バカだけど正直、子供には格闘技は勧めたくない

ーInstagramではかわいいお子さんも登場される機会が多いですが、お子さんが格闘技をやりたいと言ったらどう思われますか。

山口)う~ん、あんまり勧めたくはないですね(笑) ずっと格闘技をやってるからこそ格闘技の難しさ、大変な部分もたくさん経験してきましたし。もちろん格闘技をやっていて良かった事も助けられた事もたくさんありますよ。もし本気でやりたいと言うなら止めはしないですし応援はしますが、正直気は進まないですね。子供に対してのかわいさが勝ってるのかもしれないです(笑)

家族と愛犬に囲まれた生活がとても幸せだと語る

ーお子さんに対して凄い愛情を注いでいるのがInstagramを見てるととても伝わってきます。

今後の目標は先ほどお話をされたRISEのベルトになりますでしょうか。

山口)そうですね、まずはRISEでベルトを獲ることですね。ベルトは何本あってもいいので(笑)

ー最後にお聞きしますが、山口選手にとってプロとは何でしょうか。

山口)僕がいつも思ってるのが、格闘家はお客さんに魅せないといけないと思っています。つまり、エンターテイメントをしないといけない。勝つことも大切ですが、試合が盛り上がるような、観てくれている人の心が燃えるような試合をすることを、僕は心がけています。他の人の考えとは違うかもしれませんが、観ている人が盛り上がるためには、格闘技をエンターテイメントにしないといけないと思っています。

ー山口選手の試合の時は歓声が特に大きく、盛り上がりますもんね!今回はインタビューを受けていただきありがとうございました。

編集後記:インタビューを行うまではイカつい感じの人なのかなと思っていましたが、気さくで優しく、ノリもよくフレンドリーに話せる方でした。強さと楽しさを表裏一体で示す彼の姿勢は、多くの方に感銘を与えるようにも思いました。これからもド派手に勝って6本目のベルトの獲得を願っております!(RDX Japan編集部)
インタビュアー  上村隆介

山口 裕人

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